Research Abstract |
イワヅタ目に属する多核管状緑藻4類,センナリヅタ,コツブセンナリヅタ,ミル,クロミルから接合子を得て単藻培養を確立し,生殖,発生,体形成,細胞核の挙動等を観察した. センナリヅタおよびコツブセンナリヅタの生活史はともに,スリコギヅタ(Enomoto&Ohba 1987)およびタカツキヅタ(Ohba et al.1992)の生活史と同様であった.すなわち,成熟すると藻体がそのまま配偶子嚢に移行し,原形質が凝集し網状配列となり,同一個体内に雌雄異型の配偶子を形成し放出し,枯死した.接合子は着底し小球体となり,球形のまま肥大成長を続け,約1ヶ月後に発芽管を二極的に伸長し始めた.発芽体は原糸体を経て,発芽4〜5ヶ月後に母藻体と同様な形態をした藻体に成長した.第二世代も母藻体と同様な生殖,発生,体形成を示した.接合子が直ちに発芽管を伸長せずに小球体となり,球形のまま長期間肥大成長を続けることは,イワヅタ科の他にはハゴロモ科(Meinetz 1980)に見られるだけの珍しい現象である.ミルおよびクロミルは,成熟すると胞嚢の側壁に配偶子嚢を形成し,雌雄異型の配偶子を別個の配偶子嚢内に形成した.接合子は着底後,直ちに二極的に発芽し,約2ヶ月後,糸状枝からなる藻高1〜2cmの叢生体に成長した.この後,いろいろな条件下で培養を続けたが,胞嚢あるいは胞子嚢の形成が生ぜず,発芽体を母藻体と同様な形態をした藻体に成長させることはできなかった. イワズタ科およびミル科はともに,接合子が発芽管を伸長し始める時に,細胞核が多核化することが分かった.「ミル型生活史」=無世代交代型生活史であることは間違いないが,特にイワヅタ科の細胞核は極めて小さく(直径1〜2μm),光顕では染色体数の計測や減数分裂の観察ができなかった.ミル科の細胞核は直径7.5〜10.0μmと比較的に大きいので,今後ミル科の藻体を用いて核相および減数分裂の観察を行い,「ミル型生活史」をさらに検討して行きたい.
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