Research Abstract |
イワヅタ目に属する多核管状緑藻3種,コツブセンナリヅタCaulerpa microphysa,コケイワヅタC.webbiana,ミルCodium fragileの接合子を得ることができ,現在,単藻培養を継続しながら,各種の体形成,核相交代および生活史を観察している。 イワヅタ類2種は,ともに雌雄同株であることが判明した。両種とも雌雄異型の配偶子が接合し,接合子を形成するが,接合子は直ちに発芽せずに,約1ケ月間,肥大成長を続けた後,発芽管を伸長し始めた。発芽体は糸状のプロトネマ様体に発達した後,匍匐茎,直立茎を分化し,母藻体と同様な形態の藻体へと発達した。この生活史の型は,スリコギヅタ(Enomoto & Ohba1987)やタカツキヅタ(Ohba,Nashima & Enomoto1992)で観察されたものと同様であった。ミルの接合子は,定着1日後に発芽し,発芽管を伸長して糸状体を形成した。その後,静置培養では直立体が形成されないので,今後,振盪培養に切り替え,体形成を追跡する予定である。 イワヅタ類2種およびミルは,ともに発芽管を伸長させ始める時に,細胞核が多核化することが分かった。イワヅタ類2種では,接合子の肥大成長とともに,葉緑体が盛んに分裂し,その数を増すのに反し,細胞核は分裂せずに単核のまま巨大化した。こうした現象は,同じイワヅタ目に属するサボテングサ属Halimedaやハゴロモ属Udoteaでも報告されており(Meinesz1980),非常に興味深い現象の一つであると考えられる。 3種とも生活史上での減数分裂の位置は,まだ確認できていないが,これはイワヅタ目藻類の細胞核が極めて小さい(直径1〜2μm)ことだけではなく,藻体表面に付着しているバクテリアと区別することが困難なことも起因している。本年度は,培養体および新しい野生体を用いて,減数分裂の生じる位置を明らかにし,「ミル型生活史」をさらに検討していく予定である。
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