Research Abstract |
本研究では,流体の数値解析において,解析領域の形が特殊なだけでなく,境界が移動したり,そこで複雑な境界条件が課せられていたり,更には特殊な外力を受ける場合でも,条件の複雑さが負担や障害とならない数値解析法の開発と,いくつかの工学的な問題への応用を目指してきた.移動境界と共に変形するセルに積分型の保存則を適用して数値解析式を導き,ひとつの「境界方程式」で様々な境界を扱う「変形可能セル法」に基づいて,以下のテーマに取り組んできた.1.自由表面波および密度界面波の,地形や流れとの相互作用,2.浮体周り,生体の内部・外部のような,移動物体と流体の相互作用,3.磁場中の磁性流体や,粘性や表面張力が相対的に重要な微小重力中の流体など,特殊外力下の流体,4.数値解析結果の診断法や,安定性や精度のよい数値解析法の開発のための,数値流体力学の基礎. 1.に関連する「斜面上の二層流体における波動」の成果を,今年度前半に,MOVING BOUNDARIES'95および6th ISCFDにて発表した. 2.について大きな進展はなかった. 3.と関連して発展したのは,強磁場下における磁性流体自由表面の理論解析である.この場合の表面形状は,スパイクの集合とでも言うべき特異なもので,極めて非線形性が強く多価でもあるが,等角写像法によるこのような現象の扱い方が明らかになった.現在,前年度以前の波動解析を,この立場から見直している.これらの解析はいずれ,数値解析結果の検証に利用される. これまでの計算機コードは,個々の問題に依存する部分としない部分を分離して,問題が変わっても利用できるようにしてあったが,これを更に推し進めた「3次元汎用流体解析システム」を,今年度新たに構築した.汎用的なシステムは,追加・変更できる部分が従となりがちであるが,このシステムは,主体的に数値解析法を検証したり比較する場合,「ループ処理の共用化」「大域的番号獲得方法の統一化」によってプログラミングやデータ管理の手間を大幅に省き,オリジナルな部分の多い計算機プログラムの作成を強力に支援する.しかし,システム自体は比較的コンパクトなものである。このシステムを,4.すなわち数値解析結果の診断法や,安定性や精度のよい数値解析法に関する知識を実証的かつ系統的に蓄積するための基盤と位置づけている.
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