1994 Fiscal Year Annual Research Report
近代の歴史的町並みにおける色彩の形成・変容・計画に関する研究-下見坂のペンキ色彩の復元的考察をとおして-
Project/Area Number |
05650569
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
森下 満 北海道大学, 工学部, 助手 (10091513)
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Keywords | 神戸 / 異人館 / ペンキ色彩 / 下見板 / 時層色環 / こすり出し / 変容 / 町並み色彩 |
Research Abstract |
目的と方法:本研究は、わが国近代の歴史的町並みにおけるペンキ色彩を歴史的、文化的にとらえようとするものである。今年度は神戸市北野・山本地区の異人館群を主対象に、こすり出し、時層色環の調査、分析をとおして色彩の変容過程をあきらかにし、昨年度研究対象の函館市西部地区との比較分析をおこない、今後の色彩計画のあり方について考察した。成果:1.神戸市北野・山本地区の異人館のペンキ色彩の現状と変遷:現状は、外壁下見板が主としてクリーム系の淡く薄い色、隅柱や窓枠は緑系や茶系の深く濃い色で塗られ、コントラストのきいた塗り分けがさせ、統一的で特徴ある町並み色彩が形成されている。しかし時層色環からは、多くの建物で現状とは異なる色がかつて塗られていたことが認められた。概ね明治期から戦前にかけては萌黄色、グレー、ベ-ジュ、ピンク、黄土色など、多彩で、濃い色が使われていた。戦後以降、それが徐々に変化し、パステル調の薄く淡いクリームやベ-ジュが使われ、現状の色彩が形成された。戦争をさかいに、多色から統一色へと緩やかに変化してきたのである。その背景には、戦争という大きな時代の流れと共に、色彩感覚の異なる外国人から日本人への建物所有者の変化があげられる。2.函館との比較分析:共通点として、時代によって色が変わること、戦前に多色の時代があったこと、戦後に統一的な淡く軽めのパステル色に変わってきていることの3点があげられ、この知見は一般性をもつ可能性がある。一方、変化の速度・周期と特徴的な色には違いがあり、これは各地域の個性を示すものと考えられる。3.神戸異人館の今後の色彩計画のあり方:現在異人館の色彩に対しては現状維持の方向で指導・誘導が行われているが、本研究の知見をふまえるならば、これからの色彩の変化の余地を残すような、幅のある色彩計画が考えられる。
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Research Products
(1 results)