1994 Fiscal Year Annual Research Report
リゾチームの加水分解反応と転移反応の制御とその応用に関する研究
Project/Area Number |
05660111
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Research Institution | Kyushu Tokai University |
Principal Investigator |
鳥潟 隆雄 九州東海大学, 農学部, 教授 (00140955)
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Keywords | リゾチーム / 化学修飾 / NMRスペクトル / 触媒反応 |
Research Abstract |
リゾチームは糖加水分解酵素であるが,加水分解反応と同時に高能率な糖転移反応を触媒する.この高能率な糖転移反応の発現機構は明らかでない.本研究は糖転移反応の発現機構を明らかにし,加水分解反応と転移反応を分別制御する方法を確立し,リゾチームの利用に関する基礎資料を得ることを目的としている.昨年度は基質結合部位のA〜C部位の右側に沿って存在するループ領域(101〜105残基)にアミノ酸の置換があるリゾチームやF部位のArg114(ニワトリリゾチーム)がHisに置換しているホロホロチョウリゾチーム(GHL)の活性変動を詳細に検討した.本年度は,さらにこれらのリゾチームの置換アミノ酸を化学修飾し,活性変動を検討した.GHLのHis114をジエチルピロカーボネイトやモノヨード酢酸で修飾すると,GHLの(GlcNAc)_5を基質とした反応タイムコースは未修飾リゾチームから大きく変動した.すなわち,反応20分後の反応生成物は(GlcNAc)_1>(GlcNAc)_4>(GlcNAc)_2>(GlcNAc)_3>(GlcNAc)_5であった.この変動は未修飾リゾチームからE,F部位の結合エネルギーがそれぞれ-0.2kcal/molづつ減少し,転移反応の速度定数が35sec-1から20〜18sec-1に減少したためであった.Glu35とTrp108をエステル結合させると触媒基周辺の構造を変えることなく,触媒作用がなくなるので,Glu35とTrp108をエステル結合させたGHLの基質(GlcNAc)_6との結合を検討した.修飾リゾチームは(GlcNAc)_6存在下で^1H-NMRスペクトルを測定した結果,His114のシグナルに全く変動が無く,(GlcNAc)_6がHis114の周辺に結合していなと判断された.すなわち,基質はE,F部位のレフトサイドに結合していると考えられた.これらの結果から,基質はまずレフトサイドに結合し,つぎにライトサイドに移動すると同時に空いたレフトサイドにアクセプターが結合し,酵素-基質-アクセプター複合体が形成されると推定された.
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