1994 Fiscal Year Annual Research Report
膀胱上皮をモデルとした上皮細胞増殖制御機構に関する研究
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05670013
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
渡辺 定博 岡山大学, 医学部, 講師 (00175093)
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Keywords | 膀胱上皮 / 細胞増殖 / EGF / EGFレセプター / フォルボール エステル |
Research Abstract |
膀胱上皮は、基底細胞・中間層細胞・表層細胞の3層構造からなり通常では細胞増殖がほとんど認められない安定した上皮であるが、in vivoでフォルボールエステルのTPA処理を行うと表層細胞が剥離すると共に細胞増殖が誘導される。本研究ではこのモデル系を用いて、細胞増殖と上皮成長因子(EGF)および細胞外基質としての基底膜との関係について検索した。 これまでの研究で、ラットでは基底細胞が選択的に増殖し、その増殖がTPA処理後18〜27時間後に非常に高率で起こること、またマウスでは中間層細胞にも多くの増殖が認められ、増殖時間帯がラットより広いことを観察した。昨年度は、上皮細胞におけるEGFレセプターの発現を免疫組織化学的に検索したが、報告のある基底細胞でのEGFレセプターの発現は確認できなかった。本年度はさらに複数の抗体を用いて検索を行ったがやはり同じ結果であった。また、in vivoでの抗体処理によるEGFレセプターブロックによる増殖阻害効果についても、明確な阻害効果は認められなかった。これらの結果から判断する限り、TPA処理後の膀胱上皮細胞の増殖に対して尿中のEGFが積極的に作用しているとは考え難い。 さらに本年度は、移行上皮層の細胞構築の立体再構築を行い、増殖細胞と基底膜との関係を検討した。この過程で表層細胞がHRP(西洋わさびペルオキシダーゼ)を選択的に取り込むことを発見した。この特性を生かして連続切片像からコンピューターグラフィクスにより表層細胞の全体像を立体再構築したところ、マウスの表層細胞は基底膜には接触しておらず、膀胱上皮が重層上皮であることが判明した。細胞増殖との関係では、ラットでは増殖はすべて基底細胞であるため基底膜との接触は明らかであったが、マウスの中間層における増殖細胞と基底膜との接触に関しては、立体再構築にまでは至っていないため正確な判断はできていない。しかし免疫電子顕微鏡による観察像から予想すると、基底膜との接触の可能性が低いものと思われる。 表層細胞のHRP取り込み現象は、膀胱上皮が単なるバリヤ-ではなく物質を取り込むことを示しており、膀胱上皮細胞における新しい物質の取り込み機構の研究へと進展しつつある。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] Sadahiro Watanabe: "Selective staining of the superticial cells of mouse urinary bladder epithelium by horseradish peroxidase(HRP)." J.Electron.Microsc.43. 119-121 (1994)
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[Publications] Junzo Sasaki: "Detection of manganese superoxide dismutase mRNA in the theca interna cells of rat ovary during the ovulatory process by in sita hybridization" Histochemistry. 102. 173-176 (1994)