1994 Fiscal Year Annual Research Report
高血圧の成因に関連する血圧・体液調節系の新しい因子に関する分子生物学的研究
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05670159
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Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
福井 清 国立循環器病センター研究所, 生化学部, 室長 (00175564)
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Keywords | レニン結合蛋白質 / D-アミノ酸酸化酵素 / ヒトゲノム遺伝子 / マイクロサテライト / 血管内皮細胞 |
Research Abstract |
本研究では、レニンと結合し、その活性を阻害するレニン結合蛋白質(RnBP)と腎近位尿細管ペルオキシゾームに局在するD-アミノ酸酸化酵素(DAO)との二つの蛋白質を高血圧の成因に関連する血圧・体液調節系の因子として注目し、それらの構造と機能に関して、遺伝子工学・分子生物学の手法を用いた解析を行い、両因子の生理的意義と循環調節系への関与を追求することを目的とした。本年度は、RnBPの組織における遺伝子発現とその発現調節を検討し、またDAO遺伝子に存在するマイクロサテライトマーカーに関しては、患者家系を用いた分子遺伝学的解析を進めた。 1.ヒトゲノム遺伝子の解析 ひとDAO遺伝子の第1イントロンに存在するCA繰り返し配列により構成されるマイクロサテライトマーカーD12S105を用いて、ヒト遺伝病として12番染色体にマッピングされている脊髄小脳失調症2の遺伝子座との関連を分子遺伝学的に検索した。既に明らかとされている遺伝性脊髄小脳失調症で典型的に認められる(CAG)の繰り返し配列はヒトDAO遺伝子には存在しなかった。またキューバ国における脊髄小脳失調症2の患者集団の家系においては、DAO遺伝子エキソン内に変異は認められなかったが、この脊髄小脳失調症2の遺伝子座はヒトDAO遺伝子の近傍1 centi Morganの範囲内に存在することが明らかとなった。 2.レニン結合蛋白質遺伝子の発現とその発現調節 ブタ大動脈内皮層由来の血管内皮細胞においてはレニンとRnBPの遺伝子発現が共に認められ、血管壁レニン・アンジオテンシン系の一員としてRnBPが機能する可能性が示唆された。この血管内皮細胞では、レニン遺伝子の発現抑制因子であるアンジオテンシンII、バゾプレッシン、エンドセリン等の因子はTGF-βとともにRnBP遺伝子の発現を促進する事が明らかとなった。またラット副腎髄質由来褐色細胞腫より樹立された細胞株PC12においてもRT-PCR法により、レニンとRnBPの両遺伝子が共発現している事が明らかとなり、組織レニン・アンジオテンシン系の因子としてRnBPが普遍的に存在していることが示唆された。
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Research Products
(7 results)
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[Publications] Loredano Pollegioni: "Studies on the Kinetic Mechanism of Pig Kidney D-Amino Acid Oxidase by Site-directed Mutagenesis of Tyrosine 224 and Tyrosine 228" The Journal of Biological Chemistry. 269. 31666-31673 (1994)
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[Publications] Saori Takahashi: "Structure and Function of Renin-binding Protein" Kidney International. 46. 1525-1527 (1994)
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[Publications] 福井 清: "組織レニン・アンジオテンシン系と高血圧遺伝子研究" 循環器病研究の進歩. 15. 83-91 (1994)
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[Publications] 福井 清: "血管内皮細胞におけるレニン並びにレニン結合蛋白質遺伝子の共発現とその調節" 生化学. 66. 944- (1994)
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[Publications] 中井 正継: "大脳皮質循環を拡張性に調節する中枢" 循環器病研究の進歩. (in perss).
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[Publications] Kiyoshi Fukui: "Flavins and Flavoproteins 1993" (Kunio Yagi Ed.) Walter de Gruyter,Berlin, 889 (1994)
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[Publications] 福井 清: "免疫実験操作法" (右田 俊介 他編)南江堂, 1236 (1995)