1994 Fiscal Year Annual Research Report
肝炎、肝癌発症機構での鉄と銅、メタロチオネインの毒性学的研究:遺伝的肝臓銅異常蓄積LECラットの肝炎、肝癌発症での意義
Project/Area Number |
05670358
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Research Institution | Sapporo Medical University |
Principal Investigator |
菅原 直毅 札幌医科大学, 医学部, 助教授 (60045523)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅原 千枝子 札幌医科大学, 医学部, 助手 (50045431)
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Keywords | 銅代謝 / メタロチオネイン / LECラット / 肝炎 / 肝癌 / フリーラジカル |
Research Abstract |
昨年度までの研究で、我々は、このLECラットでの肝臓の銅蓄積は、肝細胞へ取り込まれた、銅の胆汁排泄障害によるもので、この障害は、肝lysosomeからの輸送障害が一部関係していることを明らかにした。また銅の蓄積が、メタロチオネイン(MT)の合成を誘導して、この誘導が、肝障害の早期発症を阻止しているが、一方では、劇症肝炎のひきがねにもなっていることを明らかにした。 本年度は、肝炎の発症の引金に銅が直接的に関与しているか明らかにするために、離乳後のLECラットを、銅濃度が0.5ppmと30ppm含む飼料で飼育した。生後65日目で、30ppmの銅を含む飼料を摂取したLECラットは、肝障害の指標となる逸脱酵素の活性上昇が観察された。一方、0.5ppmで飼育したラットでは、観察されず、当然ながら、肝臓の銅濃度は低値を示した。銅がその発症の原因になっていることが、より明かとなった。カチオンである銅の胆汁排泄障害があることはあきらかである、アニオンであるグルタチオンがそのキャリアになっていることが報告されているが、今回の実験で、胆汁のグルタチオン濃度は、確かに対照のラットよりも低い値であったが、胆汁への銅排泄の欠損障害を説明はできなかった。 多量に存在している銅-MTのフリー・ラジカルの消去作用を明らかにするために、MTを含む肝臓のTBA陽性物質を測定した。その結果明らかに、LECラットは低値を示した。恐らく、銅をその中に取り込むだけでなくそのことによって、積極的に障害阻止の作用を持っていることが明かとなった。生体においてメチオニンからのS-adenosylmethionine(SAM:アデノシルメチオニン)の不足は発癌プロセスのひとつとして注目されている。LECラットでのこの代謝の異常を調べたが、対照ラットと同じ程度に、経口摂取メチオニンは有効利用されていた。肝癌発症のプロモタ-が、銅蓄積なのか、あるいは、肝炎の発症経験なのか、今後の課題として取り組みたい。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] Mori,M.,Sugawara,N.et al.: "The LEC rat: A model for human hepatitis,liver cancer and much more." Am.J.Physiol.144. 200-204 (1994)
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[Publications] Sugawara,N.,Sugawara,C.et al.: "Removal of copper from the liver of Long-Evans Cinnamon (LEC) rats by tetrathiomolybdate (TTM) injection." Res.Commun.Molec.Pathol.Pharmacol.85. 217-226 (1994)
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[Publications] Sawaki,M.,Sugawara,N.et al.: "Role of copper accumulation and metallothionein induction in spontaneous liver cancer development in LEC rats." Carcinogenesis. 15. 1833-1837 (1994)
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[Publications] Sugawara,N.,Sugawara,C.et al.: "Biliary excretion of exogenous Cd and Mn in Long-Evans Cinnamon rats characterized by an inherently gross amount of Cu-MT in the liver." Arch.Toxicol.69. 137-140 (1994)
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[Publications] Sugawara,N.and Sugawara,C.: "A Cu deficient diet prevents hepatic Cu accumulation and dysfunction in LEC rats with an abnormal Cu metabolism and hereditary hepatitis." Arch.Toxicol.68. 520-523 (1994)