Research Abstract |
ホルマリン固定リンパ球は、ホルマリン固定臓器に比べ,ホルマリンが急速に細胞内へ浸透し,抽出されたDNAは急激な低分子化現象を起こすことが判明した。そこで本年度はHLA検査後の残り少量のリンパ球を用いてDNA抽出を実施し、HLA DQα,LDKR,GYPA,HBGG,D7S8,GC型のDNAタイピングを行った。 1.HLA DQ α型については,26家系のHLA検査結果から、A-C-Bハプロタイプ型を判定し、その結果とHLA DQα型との連鎖傾向を調査した。その結果、A24-Cwx-Bw52とDQα1.3,A24- Cw7-B7とDQα1.1,A33-CwX-B44とDQα1.2型等の強い連鎖関係が判明した。また特徴的な連鎖としてA30-Cw6-B13とDQα2型のハプロタイプがみられた。この連鎖は集団遺伝子学的みてA30-Cw6-B13の多くみれれる中国や韓国との人種的移動に重要なマーカーになりえるものと示唆された。 2.LDKR,GYPA,HBGG,D7S8,GC型については、血縁関係のない日本人(187名)を対象として各型の遺伝子頻度の分布を調べると共に、その親子鑑定への有用性を検討した。各型の検出は,一回の検査で5座位が検出可能なPM-PCRキットを用いて実施した。判明した各遺伝子型の観察値はHardy-Weinbergの法則に基づく期待値によく一致した。また従来のMN式とGC型検査成績との対応性をみたところ,MN式は,M=GYPA A,N=GYPA B,GC型は2=GC A,1F=GC B,1S=GC Cの完全な対応性が確認された。さらに親子鑑定資料については、従来の検査結果で父子関係が肯定された資料では,同様にすべて矛盾しなかった。また否定例では,11例中8例がLDLR,GYPA,D7S8,GC型のいずれかの型で否定された。本法は,DNAタイピングが簡便,迅速で,同時に5つの型判定が可能な点,従来のMN式,GC型における表現型の結果を遺伝子型でさらに確認できる点など,親子鑑定に非常に有用性がもたれる結果であった。
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