1993 Fiscal Year Annual Research Report
伊東細胞の形質変換制御因子の解析とその収縮機構への関与について
Project/Area Number |
05670506
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
上木 昇 兵庫医科大学, 医学部, 助手 (10160152)
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Keywords | 肝線維化 / TGF‐beta / 伊東細胞 |
Research Abstract |
様々な病態でおこる線維化過程にはマクロファージやリンパ球などの炎症性浸潤細胞が産生する各種増殖因子やサイトカインが密接に関連している。肝線維化過程においては,肝組織内での伊東細胞の形質変換(Phenotypic modulation)がとくに重要なステップである。今回の研究では,TGF‐beta(beta1とbeta2)による伊東細胞の形質変換過程の制御機構について検討した。 【.encircled1.】ELISA法を用いたヒト血中TGF‐beta1とTGF‐beta2測定系を確立した。さらにIL‐1,IL‐6,TNF‐alpha,CSF‐1も同時に測定した。 【.encircled2.】肝硬変症例での血中TGF‐beta1値は慢性肝炎症例および正常人に比べて明らに高値であったが、いずれの対象例においても血中TGF‐beta2は測定感度以下であった。また,血中IL‐1,IL‐6,TNF‐alphaは測定感度以下だあったが,血中CSF‐1値は炎症の程度と相関する傾向が見られた。 【.encircled3.】慢性肝疾患症例における組織中でのTGF‐beta1とTGF‐beta2およびalpha型平滑筋アクチン(形質変換の指標)の発現について免疫組織学的にも解析したところ、線維化の進展とともにTGF‐beta1とalpha型平滑筋アクチンの発現は増強しそれぞれの分布も一致していた。TGF‐beta2の発現は活動性肝硬変例における一部の炎症浸潤細胞にみとめられるのみであった。以上の結果から,in vivoではTGF‐beta1はautocrine機構により,TGF‐beta2はparacrine機構を介して伊東細胞の形質変換に関与している可能性が示唆された。そこで,ヒト肝より伊東細胞を含む活性化線維芽細胞を分離し培養系での実験を行った。 【.encircled4.】ヒト肝由来活性化線維芽細胞ではalpha型平滑筋アクチンの発現が認められ,この発現はTGF‐beta1とTGF‐beta2の添加により増強された。また同処理ではHGF産生も明らかに抑制され,IL‐1とIL‐6およびTNF‐alphaの添加では同様の結果は得られなかった。したがって,in vitroにおいてもTGF‐betaは伊東細胞の形質変換を促進し,同細胞からのHGF産生を制御することによって肝再生の抑制にも関与していると考えられた。
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Research Products
(1 results)