1993 Fiscal Year Annual Research Report
歯周細菌の歯周組織破壊に関連する産生酵素,とくにプロテアーゼに関する研究
Project/Area Number |
05671528
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
中村 武 松本歯科大学, 歯学部, 教授 (60064656)
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Keywords | 歯周細菌 / Prevotella intermedia / セリンプロテアーゼ / エラスターゼ |
Research Abstract |
成人歯周炎の病原菌種として嫌気性グラム陰性桿菌群が注目され,これら菌群の病原的因子についての検討が多い。本研究は歯周病原菌群の歯周組織破壊に関連するプロテアーゼ,とくにエラスチン分解活性およびキモトリプシン様活性について検討を加え,当該年度はこれらプロテアーゼのうちエラスターゼ産生菌株を見いだし,本菌の菌種同定および酵素を抽出・精製してその性状を明らかにした。 成人歯周炎の患者病巣材料(12例)の嫌気培養から得た分離菌株をエラスチン(粉末)加GAN培地で分解活性を調べ,5例の患者病巣からの分離菌株に明らかなエラスチン分解性菌を検出し,本症病巣に分解性菌が広く分布することを示唆した。本分解性菌株は,いずれも血液加培地で黒色集落を形成する嫌気性グラム陰性桿菌であった。本分離7菌株の生物学的・血清学的性状検索によってこのエラスチン分解性菌はPrevotella intermediaと同定された。エラスターゼ活性の定量は,主に合成基質Glt-Ala-Pro-Leu-PNAを用いて調べ,本活性は培養上清中には検出されず,菌体の超音波破壊試料にのみ認められ,本酵素は菌体結合性であった。酵素の抽出・精製はEL-2-1株の培養菌体を超音波破壊し,この超遠心画分の活性から本酵素は膜結合性の強いことがわかった。膜画分から酵素の抽出・可溶化には界面活性剤などの効果がなく,6Mグアニジン塩酸が有用であった。酵素の精製はこの抽出・可溶化試料を各種クロマトによって行い,最終的にはSDS-PAGEで単一バンドの高純度を得た。本菌のエラスターゼは,分子量31KDa,作用至適pH7.5,60℃,10分処理で失活した。活性は,キレート剤やCa^<2+>,Mg^<2+>で影響はなく,DFP,PMSFで阻害されセリンプロテアーゼに属していた。本酵素の基質特異性はエラスチン粉末の他にゼラチンなどを分解するがコラーゲン(type 1)には作用しなかった。
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