1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05710240
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
亀田 直美 早稲田大学, 教務部・校地埋蔵文化財調査室, 助手 (10233975)
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Keywords | 関東ローム層第V層中の石器群 / 石材原産地の時期的推移 / 瀬戸内系石器群への波及と変容 / 柔軟かつ強固な集団間の紐帯 |
Research Abstract |
武蔵野台地の関東ローム層第V層中に見られる石器群を主たる分析の対象とし、研究を進めた結果、以下の諸点が特異性としてとらえられた。また、当該期が、大きく新古2段階に細別されることも見通され、社会構造的な変化がこの間緩やかではあるが確実に進行したことが明らかになったと考える。 1 遺跡数の増加傾向。これは遺跡の機能差が顕著になった現れとして捉えられる。 2 石器製作技法の変化。所謂、西日本系の石器製作技法といったものと関東固有の製作技法との融合過程を追う事ができる。この背景には後述する使用石材の変化が大きく関与し、また、こういった異系統技術の流入の背景に比較的開放的な集団間のネットワークが読み取れると考える。 3 使用石器の変化。黒曜石の割合がやや低下し、チャート、安山岩の使用量が増加する。さらに黒曜石に関しては、信州産のものから、北関東や、伊豆産の黒曜石に原産地が変化している。今後安山岩など他の石材に関しても分析を広げるつもりではあるが、明らかな行動圏の変化が示されている。 4 大型礫群の構築。礫群自体の機能の問題など未だ研究不足ではあるが、民族誌等から、植物食との関係も含め今後検討する必要がある。生活様式の変化を示す可能性があろう。 こういった点から、当該期においては、生態系の変化により、それ以前に成立していた個々の集団の行動圏が解体され、再構築されていく。そういった混迷のなかで、異系統の石器製作技法の知識が流入し、その一部が、使用石材の変化に応じ選択される。生態系の変化はおそらく生活様式の変化も導き、ある程度のベ-ズキャンプ的なものを有する遊動性の高い生活を促す。こういった個々の集団間の紐帯は、柔軟でかつ強固であったものと推測される。
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