1994 Fiscal Year Annual Research Report
能の比較文学的研究 -主に外国文学及び現代演劇への影響について
Project/Area Number |
05710316
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
成 惠卿 東京大学, 教養学部, 助手 (10236169)
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Keywords | 翻訳 / 受容 / 新作能 / 現代演劇 / 比較文学 / イェイツ / 影響 / 劇形式 |
Research Abstract |
本研究は、日本の古典芸能である能の比較文学的広がり、特に海外における能の翻訳・紹介及び受容の様相を調べる一方、近年の能を踏まえた実験劇を検討することによって、現代演劇と能との接点を探ろうとしたものである。当初能の英訳に関する基礎的な文献の収集を計画していたが入手できないものが多かったため専ら文献複写による資料収集が多くなった。今後これらの資料に基づき、能の翻訳の際、どのような作品に関心が集中していたか、また能のどういう側面がとりわけ浮き彫りにされていたがなどといった問題を分析し、海外における能理解の諸様相を探りたいと思う。 もう一つの研究課題である能と現代演劇に関しては、実際劇場にしばしば足を運び、観劇体験を通して、能の様式及び主題が現代演劇に依然として大きな影響を及ぼしていることを確認することができた。一例として、戦時下の強制連行という現代のテーマを能の様式で表現した新作能『望恨歌』(多田富雄作)は、比較文学比較文化的に多くの問題を投げかけた作品である。かつてアイルランドの詩人・劇作家イェイツが能の形式を借りて書いた『鷹の井戸』(一九一六年)は、その後日本人の手によって『鷹姫』(横道萬里雄作)というすぐれた新作能となったが、今後このような、いわゆる「国際的」な実験はさらに続くものと思われる。一九世紀末から二十世紀にかけてなされた、イェイツやパウンドによる「能劇」Noh Playについての研究を専ら進めてきたが、今後それをさらに現代にまで広げていきたいと思っている。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 成 惠卿: "女性の愛の深さと「夢幻能」" 無限大. No.94. 68-77 (1993)
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[Publications] Sung Hae‐Kyong: "Ezra Pound and Noh: A Creative Borrowing seen in Pound's Triston" 13th Congress International Conparativeditcrature Association Tokyo Proceedings. (予定). (1994)