1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05720023
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Research Institution | Kyushu Dental College |
Principal Investigator |
長坂 純 九州歯科大学, 歯学部, 講師 (90222174)
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Keywords | 完全性利益 / 給付義務 / 保護義務 / 不完全履行 / 積極性債権侵害 |
Research Abstract |
本研究では、契約責任と不法行為責任の競合領域たる完全性利益侵害場面につき、どこまでを契約法の領域として取り込み得るのかという限界づけ、ないし不法行為との境界を接する義務のどこまでが契約法上の義務として捉えられるのかという完全性利益保護義務の射程範囲の解明をめざした。 まず、ドイツ・日本における保護義務をめぐる理論的到達点とその問題性について分析を加えた。そこでは、被侵害利益(義務の目的方向性)という観点から、保護義務の特殊性が自覚され、他の契約義務(とりわけ給付義務)との峻別を徹底させる見解が有力視されるものの、なお保護義務の給付関係との連動を説く見解、さらには目的方向性において不法行為法上の義務との同質性が指摘され、保護義務領域の限定化の動向や、保護義務を不法行為上の義務そのものであるとする不法行為責任構成説がみられる。ここから、保護関係と給付関係の峻別可能性、不法行為法上の義務との異同、保護義務違反が問題となる給付実態の理解等が問題点として浮き彫りにされる。契約債務履行過程を分析対象とする限りでは、保護義務と給付関係との峻別は必ずしも徹底できないこと、また侵害態様の分析からは、義務の目的方向性だけから保護義務領域の限界づけは困難であることを解明した。 これを受け、わが国裁判例の動向を、財産権譲渡型・財産権利用型・役務提供型契約事例に分け分析した。ここでは、裁判例自体に混乱がみられ、侵害態様の分析と関連づけて保護義務領域を確定すべきとの中間的結論に至った。 今後、学説・裁判例の動向を踏まえ、完全性利益侵害場面を、給付義務違反による場合と保護義務違反のみによる場合に分け、それぞれの契約責任構造を解明することになる。
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Research Products
(1 results)