1994 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05730053
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
金房 広幸 埼玉大学, 経済学部, 講師 (60204541)
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Keywords | 産業合理化 / 科学的管理法 / テイラーシステム |
Research Abstract |
第1次世界大戦後,ドイツにおける合理化運動は,ヴェルサイユ条約による植民地の喪失,領土の割譲,巨額の賠償金問題,さらに11月革命などによってもたらされた特殊ドイツ的な諸条件のもとで,ドイツ独占資本の復活・強化をはかることを目標としていた。しかし,インフレーションの進行による国内市場の峡隘性と大量生産体制が確立しつつあったアメリカに「技術と生産性」の点で大きく立ち後れていたドイツは,輸出競争力を強化するために生産コストを引き下げることが重要な課題となった。 このような状況下で,ドイツの機械構造業では,合理化運動が展開された相対的安定期には設備投資に基づく「技術的合理化」のかなりの部分が1925年までに行われていたのに対して,流れ生産方式の導入による労働組織の合理化が本格的に推し進められていくのが1926年以降のことであった。機械製造業は,第1次大戦前からテイラーシステムの導入が一部の大企業においてみられた工業部門であった。1926年以降,時間研究の実施は大規模な組別生産や大量生産を行う一部の大規模企業を中心に進んだのであるが,とりわけ,流れ生産方式の導入による大量生産を行っていた企業では,テイラーの時間研究ならびに作業研究はベルトコンベアや流れ作業の構造にその具体化を見いだしたのだった。こうして,時間研究や作業研究は諸作業のライン化の編成基準として重要な役割を果たしたのであった。したがって,1926年以降のこの時期は,設備投資による「技術的合理化」に変わって,テイラーシステムやフォードシステムの導入などによる労働組織の領域における合理化にむしろ重点がおかれていたと考えられる。
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