1993 Fiscal Year Annual Research Report
アダマンタン-2,6-ジエン誘導体の光励起状態に関する研究
Project/Area Number |
05740403
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Research Institution | Tsuruoka National College of Technology |
Principal Investigator |
瀬川 透 鶴岡工業高等専門学校, 工業化学科, 講師 (40216510)
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Keywords | 電荷移動 / 光反応 / アダマンタン |
Research Abstract |
本研究の目的は、互いに直交するpi-電子系を持つアダマンタン骨格分子の光励起状態の挙動を明らかにすることである。そのために、以前から合成に成功している2-ジシアノメチリデン-6-イソプロピリデンアダマンタンと2-フルオリデン-6-ジフェニルメチリデンアダマンタンに加えて、さらに新規化合物である2-ジシアノメチリデン-6-ジフェニルメチリデンアダマンタン、2-ジシアノメチリデン-6-フルオリデンアダマンタンを合成した。つぎに、この4種の化合物について種々のスペクトル測定を行ない、比較検討した。電子スペクトルの測定では、個々の発色団に特有の吸収が認められるのみで、分子内の電荷移動相互作用を示すような吸収は観測されなかった。蛍光スペクトルの測定では、フルオレンが蛍光を発する条件と同様にして行なったが、いずれの化合物でも蛍光は観測されなかった。炭素13-NMRの測定では、4種の化合物に加え、その前駆体であるカルボニル化合物もあわせて測定し比較したところ、置換基の一方をジフェニルに固定すると、6位の炭素のシフト値に1.63ppmの変化が観測され、フルオリデンでは7.31ppmのケミカルシフトが観測された。また、4種の化合物に対する光反応をメタノール中で行なったが、原料の回収以外に特定できる生成物は得られなかった。以上をまとめると、電子スペクトルの結果は、互いに直交したpi-電子系の基底状態では、強い電荷移動相互作用がないことを示しているが、逆に、炭素13-NMRの結果は、基底状態での弱い電荷移動相互作用があることを示していると考えられる。従って、光励起による電荷移動の可能性は否定できない。蛍光が観測されなかったのは、二重結合部分の回転による失活のためであると考えられるので、今後マトリックス中での測定を予定している。
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