1993 Fiscal Year Annual Research Report
胃癌におけるnm23-H1,H2遺伝子の発現と転移との関係および胃生検への応用
Project/Area Number |
05770128
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
大栗 健彦 北里大学, 医学部, 助手 (10185233)
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Keywords | nm23 / 胃癌 / 免疫組織化学 / 免疫ブロット / 予後 |
Research Abstract |
本年度は、胃癌組織におけるnm23-H1,H2蛋白の発現を、免疫組組織化学、immunoblottingにより検討し、臨床病理学的因子、及び予後との関連を明らかにした。当院で外科的に切除された胃癌50例(早期胃癌30例、進行胃癌20例)のホルマリン固定パラフィン包埋切片で、nm23-H1,H2蛋白各々に対して特異的なモノクローナル抗体(長崎大・腫瘍医学・珠玖教授より供与)を用いABC法にて免疫染色を行ない臨床病理学的検討を加えた。また、10例の胃癌凍結組織と隣接する正常組織、及び3例の胃癌細胞株から蛋白を抽出し、nm23-H1,H2の両者を認識する抗体でimmunoblottingを行った。免疫組織学的検討では、nm23-H1,H2蛋白とも、腫瘍細胞、及び正常の腺窩上皮、再生上皮の細胞質に比較的均一に発現が認められ、一部の細胞では、核内にも発現を認めた。胃癌全例にnm23-H1,H2蛋白は陽性を示したが、高分化型腺癌に比べ、低分化型腺癌でnm23-H1,H2蛋白の両者とも発現が低下する傾向を認めた(H1:高分化型1/19 低分化型15/31,H2:高分化型1/19 低分化型16/31)。また、各々の症例においては、nm23-H1とH2蛋白の発現の強さが相関しないものは進行癌で多い傾向がみられた(早期癌4/30 進行癌9/20)。組織学的ステージ、リンパ節転移、再発などの他の臨床病理学的因子との関連性は見いだせなかった。nm23-H1,H2蛋白の発現と予後との関連性は認められなかった。nm23-H1,H2各々の蛋白は、免疫組織化学、immunoblottingの結果より腫瘍細胞の分化との関連性が示唆された。また、各々の症例におけるH1とH2蛋白の発現の強さが相関しないものは進行癌に多く認められたことから、腫瘍の進展にともなってnm23-H1,H2蛋白の発現異常が増強されると考えられた。今後更に症例を重ね検討していく予定である。
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