1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05770129
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Research Institution | Kurume University |
Principal Investigator |
中島 収 久留米大学, 医学部, 助手 (30221443)
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Keywords | 肝細胞癌 / 腺腫様過形成 / 肝硬変 / 多中心性発生 |
Research Abstract |
肝癌の発生母地として肝硬変に注目し、剖検肝硬変症例および肝硬変合併切除肝癌の非癌肝組織における結節性病変を病理形態学的に検索することにより、肝硬変における肝癌の同時性多中心性発生について検討した。また、対照として、肝硬変を合併していない慢性肝炎合併切除肝癌の非癌肝組織における結節性病変の検索も行なった。 【材料及び方法】材料は剖検肝硬変51例と肝硬変を合併した2cm以下の切除肝癌60例の非癌肝組織である。この肝硬変組織を約3〜5mm間隔で全割し、肉眼的に際だった2cm以下の結節性病変を切り出し標本作成した。また、慢性肝炎合併肝癌切除94例の非癌部についても肉眼的に際だった結節性病変の検索を行なった。得られた結節性病変を肝癌取り扱い規約第3版に準じ(A)再生結節、(B)腺腫様過形成、(C)異型腺腫様過形成、(D)肝細胞癌、(E)肝内移転巣、(F)癌を内包する腺腫様過形成に分類した。 【結果及び考案】剖検肝硬変51例では結節性病変は18例(35%)に認められ41結節であった。うちわけは、A:14例(27%)、23結節(56%)、B:5例(9.8%)、6結節(14.6%)、D:6例(11.8%)、8結節(19.5%)、F:3例(5.9%)、4結節(9.8%)であった。C,Eは見られなかった。肝硬変合併肝癌切除症例の非癌部では結節性病変は60例中21例(35%)に認められ46結節であった。うちわけは、A:11例(18%)、20結節(43.5%)、B:7例(11.7%)、14結節(30%)、C:1例(1.67%)、1結節(2.2%)、D:8例(13.3%)8結節(17.4%)、E:2例(3.3%)、2結節(4.3%)、F:1例(1.67%)、1結節(2.2%)、であった。51例の剖検肝硬変において、8例(15%)に2cm以下肝癌が見られ、この内4例は多発例で、しかも全て同時性の多中心性発生が示唆された(4/8,50%)。さらに、腺腫様過形成を肝癌の前癌病変と考え、癌と腺腫様過形成を合併した症例を加えれば、その頻度は75%(6/8)である。切除例では60例中9例(15%)が、同時性多中心性発生を示唆し、同じく、腺腫様過形成を前癌病変と考えれば、その頻度は、21.7%(13/60)である。多中心性発生を示唆する肝癌の頻度が剖検例で75%、切除例で21.7%と、頻度に隔たりがあるのは切除例では、全肝の検索が出来ない事や多結節性の症例は手術の対象になりにくい為と思われる。以上のことより、肝硬変を伴う肝癌の多くは同時性多中心性発生の可能性が高いと思われる。一方、対照とした慢性肝炎合併肝癌切除例の非癌部には、1例も結節性病変を指摘し得なかったことから、肝癌の同時性多中心性発生には肝硬変の合併が大きな役割を占めていると考えられる。今後は、肝癌の再発形式に肝癌の異時性多中心性発生が、どれくらいの頻度で関与するかを再発肝結節から採取された肝生検組織を用いて検討していく予定である。
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Research Products
(1 results)