1993 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
05770265
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
中村 裕之 金沢大学, 医学部, 助教授 (30231476)
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Keywords | 全身振動 / 妊娠 / 流産 / ラット / 子宮 / 血流量 / プロスタグランジン / ストレス |
Research Abstract |
全身振動の暴露を受ける作業環境で働く妊娠中の女性労働者は、その全身振動により流産をはじめとする正常妊娠の障害が生じることが疫学的調査や症例検討により指摘されてはいるが、その発現機序についてはほとんど知られていない。そこで、全身振動による正常妊娠への障害を実験的に証明し、またその際生じる子宮血流量の減少がいかなる内分泌的機序によるかを明らかにするために、ラットに振動数8Hz、振動加速度10m/s^2の全身振動を90分間負荷した結果、全身振動暴露を施したラットでは暴露による子宮血流量の有意な減少を認めた。アンギオテンシンII(AII)前投与のラット子宮血流量は振動暴露を受けない群では増加を認めたが、振動暴露群ではその減少が観察された。コルチコステロンの値は振動負荷後に増加を認め、この増加はAII投与によってまったく影響を受けなかった。AII前投与の有無にかかわらず、対照群と全身振動暴露群の間にエストラジオールの有意な変化はなかった。全身振動負荷によるプロゲステロンの減少を認めたが、AII投与後には、全身振動の影響は認められなかった。AII投与の有無にかかわらず、振動群のプロスタグランジンE_2(PGE_2)は対照群に比べ減少を示した。プロスタグランジンF_2alphaについては、AII投与の有無にかかわらず、全身振動の影響が認められなかった。これらの結果から、全身振動によって子宮血流量が減少し、また妊娠黄体への機能障害を惹起するという正常妊娠への障害が実験的に証明された。この子宮血流量の減少は、主に全身振動の有する情動ストレスとして作用によるPGE_2への制御を介して生じると考えられた。
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