1993 Fiscal Year Annual Research Report
クローン病実験 モデルを用いた病因・病態の追求と治療効果の検討
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05770368
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
細田 泰雄 慶應義塾大学, 医学部・内科(消化器), 助手 (40219192)
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Keywords | クローン病 / 免疫異常 / 薬物療法 |
Research Abstract |
ラットに2,4,6-trinitrobenzencsulfonic acid(TNB)をエタノールに溶解して注腸し惹起される大腸炎は、肉芽腫を伴う全層性の炎症を認め、クローン病のモデルとして注目されている。我々は同モデルにおいて、大腸局所におけるT細胞、マクロファージの増加を、さらに末梢血中での抗TNB抗体の上昇を明らかとし、本モデルにおける免疫学的機序の関与を明らかにしてきた。しかし、このTNB一回注腸法では、大腸炎の発現に個体差が大きく、TNB自体による粘膜傷害も強い等の短所も明らかとなった。 そのため今回我々は、TNBを免疫する事により少量のTNBの注腸でも確実に長期にわたる炎症を惹起し、クローン病の機序解明と治療効果研究に非常に有用なモデルすなわちTNB免疫大腸炎モデルを作成を試み成功した。 この長期の抗原刺激によるクローン病モデルにおいて、大腸局所の免疫担当細胞の動態は、正常大腸粘膜と比し、T細胞、helperT細胞、suppressorT細胞、マクロファージの増加を認めた。さらにTNB一回注腸法の大腸炎モデルとの比較では、helperT細胞が増加する傾向を認めた。又、抗TNB抗体価はTNB一回注腸法と比し有意に上昇していたが、病変の肉眼的重症度との相関は認めなかった。 さらに本免疫モデルに対し、新しい抗炎症物質であるLTB4拮抗剤を投与し、その治療効果を検討した。LTB4拮抗剤投与群は、placebo投与群に比し大腸局所の肉眼所見及び組織学的所見は有意に軽度であったが、血清中の抗TNB抗体価に差異は認めず、この薬剤が本モデルの免疫機構を介してでなく、大腸局所での局所作用により効果を発現している可能性が示唆された。 今後は本モデルの免疫機構を介する薬剤の投与により、本モデルでの各種免疫装置での免疫担当細胞の動態を観察し、ヒトクローン病の病因・病態の追及を行っていく。
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