1993 Fiscal Year Annual Research Report
非可逆的心筋虚血傷害の規定因子の検討-乳酸蓄積が心筋虚血傷害において果たす役割
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05770484
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
小山 卓史 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00195877)
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Keywords | 再灌流傷害 / イノシン / 乳酸 |
Research Abstract |
虚血中イノシンが存在することで心筋の非可逆的傷害の発生にいかなる影響をおよぼすか検討するため、麻酔下にモルモットの心臓を摘出後ランゲンドルフの灌流系に連結し、酸素化したタイロード液を9ml毎分の速度で定流量灌流した。心拍数300毎分でペーシングしながら左心室内にバルーンカテーテルを挿入し左心室内圧をモニターした。収縮安定後灌流を停止し、心筋全虚血を作成した。60分の虚血後再び灌流を開始し、虚血作成前と後の間の左心室発生内圧の変化を記録した。また、灌流心を液体窒素を用い瞬間凍結固定し、虚血作成直前、再灌流直前、および再灌流後での心筋内乳酸濃度、アラニン濃度、ATP濃度を定量した。同様の実験を、虚血作成前の灌流液をイノシンを加えたタイロード液として行った。更に再灌流時の灌流液をイノシンを加えたタイロード液としても同様の実験を行った。以上によりコントロール、イノシンの虚血前投与、および再灌流時投与とし、各群間で左心室発生内圧の変化、心筋内乳酸濃度、アラニン濃度、およびATP濃度の差について検討した。イノシンを加えた群では再灌流後の左心室発生内圧はコントロール群に比し高かった。心筋内乳酸濃度、アラニン濃度、およびATP濃度に関しては、イノシンを加えた群とコントロール群の間で有意差はなかった。以上により、イノシンは虚血再灌流後の心機能を改善する作用を有するが、その機序にはアラニン産生増加による乳酸産生の抑制やそれに引き続くATPの補充などが関与していないことが示唆された。
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