1993 Fiscal Year Annual Research Report
SV40形質転換ヒト表皮細胞のTGFbetaにより細胞内シグナル伝達経路の分析
Project/Area Number |
05770609
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
岩佐 真人 大阪大学, 医学部, 助手 (20232647)
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Keywords | TGF‐beta / RB遺伝子 / 細胞周期 / SV40 / リン酸化 / 表皮細胞 |
Research Abstract |
フローサイトメトリーを用いて、細胞周期を分析すると、正常ヒト培養表皮細胞を用いた場合、10ng/mlのTGFbeta(trasforming growth factor beta)を48時間添加すると、G1/G0期が39.8%から61.3%に、S期が38.9%から2.1%に、G2+M期が21.2%から36.3%と、明らかなG1/G0期、G2+M期でのarrestを示した。一方、SV40で形質転換したヒト表皮細胞を用いて同様に細胞周期を分析すると、G1/G0期が62.5%から65.0%に、S期が19.8%から13.3%に、G2+M期が17.5%から21.8%と各周期においては変化が少なかった。S期についてのみ注目すると、正常ヒト培養表皮細胞では、94.6%もの減少(コントロール比)が認められるのに比べ、SV40で形質転換したヒト表皮細胞を用いた場合は、32.8%の減少にとどまった。これらのことからも、SV40で形質転換したヒト表皮細胞では、RB(retinoblastoma)蛋白の不活性化が、TGFbetaの増殖抑制作用の減弱を引き起こしていると考えられる。次にウエスタンブロットにより上記の細胞周期の分析と同様の条件でハーベストした細胞のRB蛋白のリン酸化、脱リン酸化を調べると、正常角化細胞ではTGF‐beta添加により、リン酸化RBの減少と脱リン酸化RBの増加が見られた。一方、SV40で形質転換したヒト表皮細胞では、TGF‐betaの添加前後でRB蛋白の状態にはほとんど変化は認められなかった。これらの結果は、フローサイトメトリーの細胞周期分析の結果とは一致するものの、sv40で形質転換したヒト表皮細胞内でのTGF‐betaの作用機序とRB蛋白のかかわりについて明らかにするには、今後のさらなる解析が必要と思われる。
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