1993 Fiscal Year Annual Research Report
in vivo NMRを用いた過呼吸負荷時のヒト脳代謝調節機構の研究
Project/Area Number |
05770756
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Research Institution | National Center of Neurology and Psychiatry |
Principal Investigator |
穴見 公隆 国立精神・神経センター, 精神保健研究所・精神生理部, 研究員 (00250225)
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Keywords | ヒト脳代謝 / 31P-MRS / 過呼吸負荷 |
Research Abstract |
過呼吸負荷の脳波学的意義はすでに確立されているものの、その脳代謝への影響については諸家の見解に一致をみていない。つまり過呼吸負荷による低二酸化炭素血症が脳の低酸素状態を惹起するか否かが論争の焦点なのである。本研究では過呼吸負荷の与えるヒト脳エネルギー代謝への影響を,8名の健常被検者の31P-MRS測定で検討した。75分間の31P-MRS測定と数分おきの動脈血ガス分析を同時連続施行し、その中で30分間のcontrol状態の後8分間の過呼吸負荷を施行した。測定はPhilips社製Gyroscan S20(2 Tesla)を用いた。Surface coilを被験者の右側頭-頭頂部に装着し測定を行った。その結果、過呼吸負荷中は31P-MRSスペクトルにおいて視察上phosphocreatine(PCr)ピークの減少と無機リン酸(Pi)ピークの上昇を認めた。またcurve fittingを施行し各ピークの相対面積を求め、生体組織のエネルギー代謝の指標であるPCr/Pi比を検討したところ過呼吸負荷中に有意にPCr/Pi比が減少するのを認めた。これらの所見は過呼吸負荷により、脳組織のCreatine kinase反応の平衡がATP産生側に傾いてPCrが減少し、また細胞質内に無気リン酸が増加することを意味する。これは脳組織が過呼吸負荷により低酸素状態に傾くと解釈される。また過呼吸による、動脈血中の二酸化炭素分圧の減少率とPCr/Pi比の減少率を各被験者ごとに系統すると、二酸化炭素分圧がcontrol時に比較して約1/2以下になる時、PCr/Pi比が有意に減少することが認められた。以上まとめると、本研究から過呼吸負荷が脳組織に低酸素状態をもたらすこと、さらに過呼吸負荷による二酸化炭素分圧の低下がcontrol時の約1/2以下となるとき脳組織の低酸素状態が生じることを示唆する知見が得られた。
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Research Products
(1 results)