1993 Fiscal Year Annual Research Report
SCIDマウスを用いた抗ヒト型モノクローナル抗体の作製
Project/Area Number |
05770888
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
川野 幸夫 慶應義塾大学, 医学部・外科, 助手
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Keywords | SCIDマウス / ELISA法 / ヒト免疫グロブリン |
Research Abstract |
SCIDマウス(severe combined immunodeficient mouse)にヒトリンパ球を移植することにより,ヒト免疫系のマウスでの再構築の可能性が既に報告されている.本研究ではヒト脾組織をSCIDマウスに移植した後,ヒト癌で免疫し癌に特異的なヒト免疫グロブリンの産生の有無を検討した. ヒト脾組織をSCIDマウスの背部皮下に移植した後,ヒト大腸癌株COLO205を移植しCOLO205に反応するヒトIgGをELISA法で検出した.その結果,COLO205に反応するIgGは,総IgG量の増加に伴って,免疫1週間後より増加し3〜4週間後にはdonnorの血清に比し10〜1000倍の高い反応性を示した.一方,異なる大腸癌株C-1に対するIgGの反応性は免疫マウスと非免疫マウスの間で差を認めなかった.このようにヒト脾組織をSCIDマウスに移植しヒト癌で免疫することによってその癌に特異的なヒトIgGが当該マウス血清に検出されることが明らかになった.次に,癌患者が既にある種の癌抗原に感作されているか否かについて検討した.胃癌患者(22例)と特発性血小板減少性紫斑病(ITP,8例)から脾組織を採取しSCIDマウスに移植後,前述と同様の検討をCOLO205を用いて行なった.その結果,癌患者の脾組織を移植されたマウスのCOLO205反応性IgG量は,ITP患者の脾組織を移植されたマウスに比し明らかに高い値を示した.さらにCOLO205反応性IgGの産生が高いマウスの腫瘍は低いマウスに比べ,有為に高い増殖速度を示した.このように癌患者は既に担癌状態によってなんらかの抗原刺激を受けており,特異抗原が癌の増殖に関与していると推察された. 以上より,SCIDマウスにヒト脾組織を移植することによって当該マウスにヒト免疫系を再構築し得る可能性が示され,本実験系は新しい癌抗原の同定やヒトモノクローナル抗体の作製,さらには癌免疫学の基礎的研究などに有用と考えられた.
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