1993 Fiscal Year Annual Research Report
腹部大動脈瘤の成因に対する形態学的免疫組織学的アプローチ
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05770910
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
折口 信人 (財)東京都老人総合研究所, 臨床病理部門, 助手 (90250191)
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Keywords | 腹部大動脈瘤 / 高齢者 / 剖検 |
Research Abstract |
1992年から1993年までの東京都老人医療センターの剖検例のうち、56歳以上の高齢者190例の腹部大動脈について肉眼的に観察するとともに、腎動脈レベルと下腸間膜動脈レベルにおける腹部大動脈の内周を測定してその比率(以下、内周比と略す)を計算した。なお、内周比≧1.5を瘤、1.5>内周比>1を拡張型とした。 1.性別は、男性が91例(平均79.1±8.3歳)で、女性は99例(平均81.3±8.2歳)であった。 2.瘤は8例(4.2%)に認め、男性4例(平均80.8±4.2歳)・女性4例(平均81.0±6.2歳)であった拡張型は31例(16.2%)あり、男性15例(平均78.3±7.5歳)・女性16例(平均79.8±7.4歳)であった。その他、動脈解離が1例(0.5%)認められた(80歳女性)。 3.非拡張性の腹部大動脈の直径は、腎動脈レベルで、男性が16.1±1.9mm,女性が14.4±1.9mmであり、下腸間膜動脈レベルではそれぞれ、14.7±1.8mm、12.8±1.7mmで、いずれも男性の方が有意に大きい傾向が認められたが、身長に対する直径の比を用いた検討では、有意差は認められなかった(P<0.01)。 4.内周比は男性が0.95±0.11、女性が0.93±0.11で男女間に有意差はなく、年齢、身長、体重、動脈硬化の程度との間にも相関は認められなかった(P<0.01)。 高齢者の5人に1人(瘤4.2%、拡張型16.2%)は腹部大動脈に拡張性病変を有しており、注意が必要である。しかし、瘤壁における中膜の変性は著しく、拡張型のそれとは比較にならない程であった。今回の検討では動脈硬化から瘤に至る移行型の検討が不十分であり、さらに症例数を重ねることが必要であると思われた。
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