1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト甲状腺腫瘍におけるプロテアーゼ活性に関する研究
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05771372
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Research Institution | Kinki University |
Principal Investigator |
楠 威志 近畿大学, 医学部, 助手 (30248025)
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Keywords | ヒト甲状腺 / I型コラゲナーゼ / IV型コラゲナーゼ / カテプシンB / カテプシンL |
Research Abstract |
外科手術により摘出した甲状腺腫瘍組織を用いて、癌の浸潤、転移の際働くプロテアーゼ(カテプシンBおよびL、I型およびIV型コラゲナーゼと母腫瘍の進展度とを比較検討し以下の結果を得た。 i)カテプシンB活性、I型およびIV型コラゲナーゼ)活性は良性および悪性病変群が正常甲状腺群より有意に高値を示した。そのなかで、3者共に被膜外浸潤、リンパ節転移を認める癌症例ではより高値を示した。 以上のことから、ヒト甲状腺腫瘍においてカテプシンBは浸潤・転移に関与し、その際I型およびIV型コラゲナーゼに影響をおよぼしていることが示唆された。 ii)カテプシンL活性については、悪性病変群が正常および良性病変群より有意に高値であったが、母腫瘍の被膜外浸潤の有無と関連性は認められなかった。しかし、その母腫瘍を用いてエラスチカ染色を行ったところ、エラスチンの連続性がないものほど、カテプシンL活性が高値を示した。また、腫瘍性病変においては、微小濾胞、索状構造のような充実性病変、つまり細胞増殖が強い領域に一致してエラスチンの連続性は認められなかった。 以上の結果によりエラスチンの不連続性の有無が腫瘍増殖能のマーカーになりえることが示唆された。このことは、患者の予後や治療方針の決定に役立つものと考える。
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