1993 Fiscal Year Annual Research Report
眼内増殖膜におけるプロテオグリカン(デュリン)について
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05771402
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
片山 智子 徳島大学, 医学部, 助手 (30233753)
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Keywords | 眼内増殖膜 / 免疫組織化学 |
Research Abstract |
眼内増殖膜を生じる疾患のうち血管疾患として増殖性糖尿病性網膜症3例、老人性円盤状黄斑変性症1例、非血管性疾患として特発性黄斑上膜形成症1例、網膜剥離術後の黄斑上膜形成症1例を選び、硝子体手術時に得られた眼内増殖膜を対象とした。 増殖膜の構成成分としては前回の報告と同様に細胞成分、血管成分、膠原線維成分の3成分が認められた。増殖性糖尿病性網膜症では、膜形成早期のものと瘢痕期のものでは各成分の構成比率は異なり、早期のものはマクロファージ、新生血管を多数認め、瘢痕期のものは膠原線維成分が主で線維中にはGFAP(+)細胞(GFAP:gliar fibillary acidic protein)すなわちグリア由来の細胞が認められた。老人性円盤状黄斑変性症の網膜下増殖膜は血腫を主体とする部と血腫中に膠原線維が樹枝状に伸びている部、完全に膠原線維に置き変わっている部が混在して認められた。すなわち網膜下血腫が器質化していく各過程が観察できた。黄斑部上膜形成症は全例に血管成分は認められず、先の血管性疾患とは膜形成過程が異なると考えられた。 最近、眼内増殖膜形成にはTGF-beta(transforming growth factor)が重要な役割をなし細胞外基質の合成、細胞接着因子の発現促進に関与し、プロテオグリカンの一つであるデコリンがTGF-betaと結合しその活性を調節していることも明らかになってきた。そこで抗デコリン抗体、抗TGF-beta抗体をもちいて免疫組織学的に検討を加えた。老人性円盤状黄斑変性症の網膜下増殖膜は血腫の部ならびに血腫に膠原線維が混在している部がTGF-beta_1陽性に染色され、TGF-beta_1陽性部がデコリン抗体で主に陽性に染色された。このことはグリア細胞の増殖を促進するTGF-betaが血球より放出され、コラーゲン、ファイブロネクチンなどを誘導し膜形成がなされていることを示唆するものと考えた。 しかしその他の増殖膜についてはデコリン、TGF-beta_1の相関性は認められなかった。
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