1993 Fiscal Year Annual Research Report
網膜および視神経の虚血性障害の形態学的研究と薬物による抑制
Project/Area Number |
05771451
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
高井 勝史 関西医科大学, 医学部, 助手 (30179402)
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Keywords | 高眼圧 / 虚血 再潅流 / 神経節細胞 / 視神経 / 軸索 |
Research Abstract |
ラット眼に高眼圧状態を作り網膜に虚血を発生させ、網膜と視神経における虚血-再潅流による障害の発生と進行状態を形態学的に観察した。前房内へ生理食塩水を潅流することにより眼圧内を110mmHgに上昇させ、全眼虚血を30、45、60、90、120分間負荷させた後、高眼圧を解除し血液の再潅流を図った。再潅流後7日目に、光学顕微鏡(光顕)で網膜と視神経を、電子顕微鏡(電顕)を用いて視神経の変化を形態学的に調べた。さらに単位面積当たり(10mum×10mum)の軸索数を測定して、各虚血時間の視神経障害の程度を定量評価した。高眼圧による虚血30分間持続例では、全例で光顕及び電顕所見で網膜の全層と視神経に変化を認めなかった。虚血45分間持続例で初めて、網膜神経節細胞の部分的な脱落消失と、神経線維層と内網状層の萎縮による網膜内層の菲薄化をみた。しかし外顆粒層から色素上皮細胞層の外層には全く変化をみなかった。視神経にも光顕所見では軸索の消失や細胞成分の増加はなかったが、電顕所見では軸索内にミトコンドリアの膨化したものや、ミエリン鞘の層状構造の乱れを所々にみた。虚血60分では、障害が明らかとなりその程度も強くなった。虚血90分間以上持続例では細胞の不可逆的な変性壊死がみられた。次に軸索の数を勘定することによって、視神経障害の程度を定量評価した。コントロール群では、119.1±10.2(Mean±SD)本、n=4、45分群は、79.2±6.4本、n=8、60分群では、48.1±9.1本、n=4、90分群は、33.3±5.5本、n=4、120分群は、25.1±4.5本、n=4だった。各群間には、統計学的に有意に差があった。虚血45分から60分の間で網膜と視神経に障害の発生がみられ、虚血時間が長くなるに従って障害は増強した。一番最初に障害を受ける神経細胞は、網膜神経節細胞とその軸索だった。網膜と視神経の障害の程度は、その虚血時間と相関していた。
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