Research Abstract |
口腟内に存在する充填物は,唾液や飲食物,咬合,ブラッシングなどにより経時的に劣化していくが,本研究では口腟内の環境をシュミレートした加速試験を行い,各種充填材料の劣化と着色・変色との関係を検討した。使用充填材は,CLEARFIL PHOTO ANTERIOR,CLEARFIL PHOTO POSTERIOR,CLEARFIL FII(以上クラレ社製),GRAFTLCII,FUJI IONOMER TYPEIILC(以上GC社製)の5種類であり,4×4×20mmの直方体試料を作製し,表面をシリコンカーバイドペーパー#1000で研磨した後,以下の実験に供した。1)4℃⇔60℃のサーマルサイクリング試験,2)0.01N乳酸,NaOH溶液への浸漬試験,3)3ボディタイプの回転摩耗試験器による摩耗試験,4)恒温恒湿槽(60℃,相対湿度95%)中30日間保管試験の4種類の負荷を与え,試料体を劣化させた。試験前後の充填材表面の平均表面粗さを万能表面形状測定器(SE-3E,小坂研究所)で測定し,レプリカ模型をSEM(JSM-5200,JEOL)で観察した。次いで試料体をOil orangeと蒸留水に浸漬し,1,2,4週間後の色差を色差計(1001DP,日本電色工業)で測定した。光重合型レジンでは2)の負荷で最も劣化が著しく着色も高度であったが,その他の負荷ではわずかな劣化しか認められず着色も軽度であった。また,劣化により表面が粗造になったものほど着色が著しい傾向があったが,変色はほとんど生じていなかった。光硬化型グラスアイオノマーでは,すべての負荷に対して著しく劣化しており,着色・変色も著名であった。CLEARFIL FIIでは、着色はグラスアイオノマーほどではないが,光重合型レンジより著しく,特に気泡部への着色が著名であった。また,変色もわずかに認められた。以上のことより,劣化した充填材ほど着色・変色が生じ易いといえるが,光重合型コンポジットレジンでは他の充填材と比べて着色・変色が抑制されているものと考えられる。
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