1993 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト歯髄細胞の増殖と分化に対するTIMP-1の影響
Project/Area Number |
05771663
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
中田 和彦 愛知学院大学, 歯学部, 助手
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Keywords | 根尖病変 / 細胞外マトリックス / マトリックスメタロプロテアーゼ / TIMP / ヒト歯根膜細胞 / 偏性嫌気性菌 / 菌体成分 |
Research Abstract |
根尖病変は、根尖部歯周組織の炎症性変化を主体としたもので、それに伴う組織破壊は、コラゲナーゼ、ゼラチナーゼなどのマトリックスメタロプロテアーゼ(MMPs)とそのインヒビター(TIMP)とのバランスが、細胞外マトリックス成分分解の方向へ誘導されることが大きな要因と考えられる。一方、感染根管内から分離される偏性嫌気性菌は、多彩な生物活性を有し、根尖病変の成立にも深く関与していると考えられている。そこで、ヒト歯根膜細胞のMMPsとTIMPの発現に対する根尖病変関連細胞の菌体成分の影響について検討した。その結果、コラゲナーゼ生産においては、活性型には各菌種間で差は認められなかったのが、全コラゲナーゼについては、P.gingivalisとP.intermediaで、コントロールに比べて約20%の産生抑制が認められたのに対して、F.nucleatumでは、約70%と有意な生産促進が認められた。また、ゼラチナーゼ産生については、コントロールに比べてP.endodntalisで約180%、P.gingivalisで約70%とそれぞれ活性型の産生を顕著に促進した。しかし、全ゼラチナーゼでは、両菌種ともにコントロールとの差は認められなかった。さらに、P.intermediaでは、全コラゲナーゼと同様に約30%と有意に産生を抑制した。一方、TIMP-1生産については、P.gingivalisとF.nucleatumで、コントロールに比べてそれぞれ約50%と約70%の生産促進が認められた。しかし、P.endodontalisとP.intermediaでは、そのような作用は認められなかった。以上、ヒト歯根膜細胞のMMPsおよびTIMPの発現に対して、根尖病変関連細菌の菌体成分の作用に違いがあることを認めた。この事実は、根尖性歯周炎にみられる組織破壊が進展する時、根尖部局所に感染した主要な細菌の違いによって、局所での細胞外マトリックス成分の分解パターンに違いが生じる可能性を示唆している。
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