1993 Fiscal Year Annual Research Report
歯科用金属の安全性試験-金属イオンの細胞障害性について-
Project/Area Number |
05771749
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Research Institution | Matsumoto Dental University |
Principal Investigator |
田坂 裕子 松本歯科大学, 歯学部, 助手 (30247514)
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Keywords | 純金属 / ヒト唾液 / 溶出イオン濃度 / 細胞毒性 / 50%発育阻止濃度 |
Research Abstract |
1溶出濃度の測定 銅、亜鉛、銀、パラジウムの純金属片をヒト唾液に浸漬し37℃で100回/分の振とうを与え、3週間の経時的な溶出イオン濃度をICP法により測定した。銅は一番顕著に溶出し、イオン濃度は経時的に高くなり、3週間後には274mug/cm^2の溶出量が認められた。試験片には著しく緑青色の酸化銅が付着し、激しい腐食の起こったことがわかった。亜鉛の溶出量は、3週間で14mug/cm^2であった。この溶出傾向は特徴的で、3日目には全溶出イオンのほとんどが溶出し、それ以後は恒常的であった。試験片表面には、タンパク質と考えられる白色の物質が付着しており、この物質の沈着によりそれ以降のイオンの溶出が抑制されたためと考えられる。銀とパラジウムの溶出量は非常に微量で表面性状にも変化はみられず、この2種類の金属の唾液に対する耐食性は優れたものであった。 2細胞毒性試験 溶出量の多かった銅と亜鉛について、L-929細胞を10%牛胎児血清を含むダルベッコ変法MEM培地を用いて、初期細胞濃度2×10^4cells/mlとし、3日間作用させ50%発育阻止濃度(IC_<50>)を求めた結果、平均で銅1.28ppm(20.2muM)、亜鉛10.6ppm(159pM)であった。 以上の結果より、金属修復表面積を1cm^2、唾液流量を1L/dayと仮定した時、(1)銅では装着後直ちにIC_<50>に達し、1日で細胞が死滅してしまうほどの毒性を発揮する(2)亜鉛では2〜3日でIC_<50>に達するがその後は溶出濃度が上昇しないため、全ての細胞が死滅する濃度には到らないことが明らかとなった。 今後は、上皮細胞やリンパ球の初代培養細胞に対する毒性を調べ、アレルギーや扁平苔癬などの難治性疾患との関連を検討する予定である。
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