1993 Fiscal Year Annual Research Report
都市近郊部で救命率向上に寄与するドクターカ-の運行方法の研究
Project/Area Number |
05772029
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
浅利 靖 北里大学, 医学部, 助手 (30202609)
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Keywords | ドクターカ- / レスポンスタイム / DOA / 救急救命士 / プレホスピタルケア |
Research Abstract |
目的:都市近郊部で、救命率向上に関与するドクターカ-(以下DCとす)の運行方式の検討を目的とした。 対象および方法:過去6年間の当院DCの827件の出動、過去13年間のDOA症例1127例、および消防署指令室関係者との検討会をもとに、出動状況、運行方法、出動基準、使用機材について検討した。 結果および考案:1)出動状況:827件の出動のうち、現場出動は8件0.97%、他院からの重症患者搬送の前方搬送が178件21.5%であった。緊急出動時、要請から出動までに8.472.2分要していた。この段階ですでに救急隊のレスポンスタイム(以下RTとす)6.273.1分を超過していた。このように現状では救命率向上には関与していないと考えられた。2)運行方法及び出動基準:運行状況の検討より現状ではDCのRTは、これ以上の短縮は困難と考えられ、消防の短いRTを有効に利用することが必要と思われた。このために、DCを地域の中央に近い消防署に設置し、救急隊が運行し、同署に救急救命士と救急指導医を配置する船橋方式が最良と考えられた。そして通報後直近の救急車と同時に出動し、現場で合流して搬送するというのが有効と思われた。3)出動条件:RTが短縮困難な現状では、現場出動は、外傷患者やレスキュー隊が出動するような救出に時間のかかる症例でのみ有効と考えられた。また他院より要請れさた場合、ショックやくも膜下出血や、胸腹部の動脈瘤など安静、血圧コントロールを必要とする症例、また人工呼吸などの呼吸管理を必要とする症例で適応と考えられた。しかし地域の中心の消防署で救急隊運行のDC制度が可能ならば、意識障害の存在する患者で出動することも意味があると考えられる。4)搭乗機材:当院のDCは集中治療室並に人工呼吸器をはじめとして集中治療室並に機材を搭乗しているが、過去の運行での使用機材の検討では、静脈路確保セット、気管内挿管セット、酸素、酸素飽和度モニター、除細動器付き心電図モニター、緊急薬剤セット、微量輸液用ポンプ、さらに外傷患者の緊急度から胸腔ドレナージセット、ショックパンツなどが必要と考えられてた。 当初DCの設置目的の一つは、近年増加しているDOA症例の救命率向上であったが、最短時間である救急隊のRTが約5分で,本邦ではbystanderCPRがほとんど行なわれな現状から考えると、現着時心電図モニター上standstillの症例では、DCを運行しても救命率向上は困難と考えられた。ただし2次救命処置の早期開始が有効な現着時心電図モニター上心室細動症例ではDCは有効と思えるが、現場での心室細動は安川らによると全DOA中29%と少ない。以上よりドクターカ-はDOA症例での救命率向上より重症患者の安全な輸送、重症患者の救命率向上を目的にすることが最良と考えられた。
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