1994 Fiscal Year Annual Research Report
指の回旋運動が生体諸機能(特に自律神経系)に及ぼす影響の研究
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05807040
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Research Institution | University of Tokyo |
Principal Investigator |
栗田 昌裕 東京大学, 医学部・附属病院, 助手 (60251237)
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Keywords | 指 / 脳磁図 / 指回し体操 / 皮膚血流 / 自律神経 / 皮膚温度 / 痛覚閾値 / 筋肉攣縮 |
Research Abstract |
本年度は、研究計画に従い、昨年に引き続き指の回旋運動の効果がより深いレベルで評価できた。新たに分かった指回旋運動(以下指回しと呼ぶ)の効果は次の諸点である。1)指回しは遠隔の皮膚(例えば、肩の皮膚)に与える電気刺激の痛覚閾値を即時的に上昇させる。2)指回しは筋肉の攣縮閾値を上昇させる。具体的には低周波電流を経皮的に流して皮下の筋肉が攣縮する閾値を観察すると約3分間の指回し体操で遠隔の筋肉に明確な閾値の上昇が認められる。これは肩こりその他の不定愁訴に対して指回しが有効なことを示唆する。脳磁場ではその際の脳磁場波形の変化を観察できた。3)指回し中のサーモグラフィーでの観察から、体表各場所の皮膚温度がさまざまに変動する事実が見い出され解析された。この現象は指回し体操が自律神経の局所性反応を観察する便利な系であることを示でい、治療に対する反応の個人差もこの反応の個人差と相関を持つ可能性がある。4)瞳孔の対光反射は自律神経反応を直接に見る系として意義深いが、電子瞳孔計により、指回し直後には対光反射の時間スケールが短縮する(=反応が速くなる)ことが分かった。繰り返しの指回し負荷で対光反射の種々の時間パラメーターが変動することも分かった。5)指回しにより数字の認知速度が上昇し、数字の単純記憶力が増強することが分かった。6)長期的に平衡機能の改善が認められた。7)指回しを継続することで集団の体重が有意に減少するデータが得られた。今後更に事実を確認の必要があるが代謝中枢(または食欲中枢)に変動を与える要素があるかもしれない。9)片腕の挙手と下垂をさせることで自律神経の働きを評価するテストを考案し、指回旋運動体操の前後で解析すると、挙手時の指の皮膚血流の低下と回復のパラメーターが有意に変動し、指回し以外の指運動では類似効果は認められなかった。以上の諸結果はそれぞれ然るべき雑誌で公表する予定である。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] 栗田昌裕: "東京都の学童父母の頭痛、肩こり、腰痛を含む健康度、知的活動度の自他覚的評価と、子供及び配偶者の訴えとの関連について" 日本健康教育学会誌. 2. 74-75 (1994)
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[Publications] 栗田昌裕、小俣政男: "中学生に対する指回し体操と肩凝りほぐしによる視力の即時改善現象について" バイオフィードバック研究. 21. 94- (1994)
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[Publications] 栗田昌裕: "身体・精神インターフェイスを賦活して情報処理能力を高めるSRS能力開発プログラム" 第10回ヒューマンインターフェース・シンポジウム. 369-375 (1994)
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[Publications] 栗田昌裕: "肩関節周囲炎に対する「まわひねりき治療」の効果." 日本手技療法学会雑誌. 5. 53-58 (1994)
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[Publications] 栗田昌裕,小俣政男: "座位指回し運動が総頸動脈血流、心機能、頸部皮膚血流、瞳孔対光反応に及ぼす影響" 超音波医学. 21(Supplement). 258- (1994)
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[Publications] 栗田昌裕,小俣政男: "痛みに対するペンタゾシン静注の影響…超伝導量子干渉計を用いた脳磁図による評価" 日本ペインクリニック学会誌. 210- (1994)