1993 Fiscal Year Annual Research Report
アイヌ民族の若年層における民族意識とアイデンティティ
Project/Area Number |
05851037
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Research Institution | Kanagawa University |
Principal Investigator |
笠間 千浪 神奈川大学, 外国語学部, 専任講師
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Keywords | 先住民族 / アイヌ / エスニック・マイノリティ / アイデンティティ / 若年層 / 民族意識 / 社会運動 |
Research Abstract |
本研究は、アイヌ民族のアイデンティティと民族意識を、先住民族としての独自性と、在日韓国・朝鮮人・中国人との共通性を視野に入れながら、おもに若年層を中心に聞き取り調査を実施し考察するものである。ただし、本研究は予備的研究という性格もあり、今回の調査はなるべくヒアリング対象者やインフォーマントとのラポールを築くことを第一とした。関東ウタリ会(関東在住アイヌ民族の組織)の方々の協力のおかげで、ヒアリング対象者の選定がより容易になったことに感謝している。まず、北海道では、アイヌ民族である学校教師の方々が中心となっている勉強会(『少数民族懇談会』)の例会に参加させていただき、アイヌ民族の抱える問題状況について聞き取りをおこなった。次に、冬の間、アイヌ民族(その世帯員を含む)が対象となっている職業訓練と伝統文化保持とを兼ねた活動である「機動訓練」(刺しゅうコース)を見学しながら、そこに参加していた女性たちからヒアリングをおこなった。(以上、苫小牧)私的にアイヌ文化博物館を経営しつつ、アイヌ語教室運動に携わる人物からも聞き取りをした。彼によると、世界の先住民の運動が自らの運動の活力源となっているようであった。(以上、旭川)数人のアイヌの若い世代からヒアリングをおこなったが、今後とも継続していくつもりである。(以上、札幌)未だヒアリング対象者の人数が少なくて、類型化までは至らないが、アイヌの若い世代は、中高年層が抱く「負のイメージ」がほとんどといってよいほどなく、むしろ自分の個性の一要素としての「プラスのイメージ」としてとらえているということがうかがえた。北海道ウタリ協会での聞き取りでも、これらのことは再確認できた。このことは、当初の作業仮説としてのアイヌ民族の「アイデンティティ再構築」が若年層を中心としておこっていることを裏付ける。なお、民族運動におけるジェンダー要因も重要な課題であることが判明したが、今後のヒアリングの積み重ねで明らかにしていきたい。
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