1994 Fiscal Year Annual Research Report
特異な物性を示す一次元有機伝導体における同位体効果及び磁気的相互作用の研究
Project/Area Number |
05854021
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
澤 博 東京大学, 物性研究所, 助手 (50215901)
|
Keywords | 分子性導体 / 一次元伝導体 / 金属-絶縁体転移 / モット絶縁体 / 電荷密度波 / リエントラント現象 |
Research Abstract |
分子性伝導体(DMe-DCNQI)_2Cuにおける重水素置換による同位体効果について、電気伝導性、結晶構造及び磁気的性質について研究を行った。この系は、DCNQI分子の積層構造による1次元p_<pi>バンドと、DCNQI分子を配位子として3次元的なネットワークを構成するCuのd軌道との相互作用により、興味深い物性を示すことで注目を集めている。結晶を構成する各分子の8個の水素を選択的に重水素置換することにより、1.低温まで金属状態を保つグループI、2.比較的高温(約80K)で金属-絶縁体(M-I)転移を生じるグループII、3.二つのグループの中間に位置し、温度下降とともにM-I-Mとリエントラントな転移を示すグループIIIの3つに大別することができる。この一連の現象はchemicalpressureの観点から理解されることが、改良型X線四軸回折計による精密な格子定数の測定から明らかとなった。この圧力依存性は、通常の一次元伝導体における圧力による次元性の上昇と金属状態の安定化という図式とは全く逆であり、この転移におけるCud軌道の物性への寄与が重要であることを示している。そこでこの転移の物理的描像を明らかにするため、3つのグループの良質の単結晶を作成し、物性測定を行った。特にグループIIIの転移は、これまで圧力下の物性データしかなかったために不明瞭であったが、この選択的重水素化試料によって常圧で精密な物性測定を行うことが可能となった。この結果、絶縁相ではグループII,IIIの区別なく分子の積層方向に3倍周期の電荷密度波(CDW)が生じていることが低温X線カメラで明らかとなった。更にこの領域では、通常のCDWとは異なりCu^<2+>(S=1/2)の局在モーメントの出現がSQUIDによる静磁化率の測定から明らかになった。グループIIIのリエントラント金属領域ではこの電荷密度波と局在モーメントは消失し、高温側の金属状態と同じであることがわかった。以上のように、この系における特異な転移の物性が本研究によって明らかになり、現在これらの現象を解明するために多くの研究機関で様々な研究が進められている。
|
Research Products
(5 results)
-
[Publications] S.Aonuma: "Giant Metal-Iusulator-Metal Transition Induced by Seleetive Deuteration of the Molecular Conductor,(DMe-DCNQI)_2Cu" Chemistry Lrtters. 513-516 (1993)
-
[Publications] R.Kato: "Preparation and Physical Properties of an Alloyed (DMe-DCNQI)_2Cu with Fully Deuterated DMe-DCNQI." Solid State Communication.85. 831-835 (1993)
-
[Publications] M.Tamura: "Weak Ferromagnetism and Magnetic Anisotropy in Cu Salf of Fully Deuterated DMe-DCNQI,(DMe-DCNQI-d_8)_2Cu" Journal of the Physical Society of Japan. 62. 1470-1473 (1993)
-
[Publications] H.Sawa: "Novel Electronic States of Partially Deuterated (DMe-DCNQI)_2Cu" Journal of the Physical Society of Japan. 62. 2224-2228 (1993)
-
[Publications] M.Tamura: "Magnetic Study of Metal-Iusulator-Metal Transitions in (DMe-DCNQI-alpha,alpha-d_2)_2Cu" Journal of the Physical Society of Japan. 63 (in press). (1994)