1993 Fiscal Year Annual Research Report
食物アレルギーの消化管粘膜の免疫応答に関する研究:便中TNF値および便中IgE値
Project/Area Number |
05857088
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
笹井 敬子 順天堂大学, 医学部, 助手 (60196144)
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Keywords | 食物アレルギー / I型アレルギー / IgE / TNF |
Research Abstract |
【目的】即時型アレルギー症状のある食物アレルギー患児では、食物抗原摂取後の便中IgE値が摂取前に比べ高値を示すことから、便中IgE値の上昇は食物抗原刺激に対する消化管粘膜でのI型アレルギーによる免疫応答を反映すると考えられる。また最近、サイトカインのTNFは肥満細胞からも産生されることや、クローン病などの炎症性腸疾患では便中TNF値が高いことなどが報告されている。本研究では、食物アレルギー児に食物抗源の経口負荷を行い、抗原摂取前後の便中TNF値を測定し、便中TNF値と誘発症状や便中IgE値との関連性を検討する。食物アレルギーの抗原の侵入部位である消化管粘膜の免疫応答を直接反映すると考えられる便中のTNF値やIgE値を測定し、肥満細胞に着目してこれらの点を明らかにする。 【対象および方法】食物アレルギー患児10例に食物抗原の経口負荷試験を行い抗原摂取前とその後3日間、排便毎に採便し、便中のTNF値およびIgE値を測定する。対照は同年齢の健康小児5例である。採取した便は、リン酸バッファーに溶解し遠心分離後の上清を被検検体とする。TNF値は酵素抗体免疫蛍光法で、またIgE値はデルフィアシステムを用いて時間分解免疫蛍光法で測定した。便中TNF値およびIgE値の経時的変動、誘発症状との関連を検討する。 【結果】1)食物アレルギー患児10例では、抗原摂取後30分以内に発疹、喘鳴などの即時型アレルギー症状が誘発された。対照の5例では、抗原摂取後3日間に誘発症状は認められなかった。2)食物アレルギー患児の便中IgE値は、抗原摂取前に比べ抗原摂取後24時間以内で有意に高値で、48時間後は低下した。対照例の便中IgE値は、抗原摂取前後で明かな変動は認められなかった。3)食物アレルギー患児および対照例の抗原摂取前後の便中TNF値は、抗原摂取後72時間以内まで経時的に測定したがでいずれも検出感度以下で、抗原摂取前後で明かな変動は認められなかった。 以上、抗原摂取前後の便中TNF値には明かな変動は認められず、臨床症状やIgE値との関連性などを明かにできなかった。便中IgE値と同様に便中TNF値は微量であり、本研究の結果では、測定感度の点での検討が必要と考えられた。
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