1993 Fiscal Year Annual Research Report
脳血管攣縮の形態学的研究-血管周囲アシドーシスによる血管内皮損傷について-
Project/Area Number |
05857138
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
木村 正英 弘前大学, 医学部, 助手 (30241467)
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Keywords | クモ膜下出血 / 脳血管攣縮 / アシドーシス / 血管内皮細胞 / 血小板凝集 |
Research Abstract |
成兎を用い、クモ膜下出血後に低pHである生理食塩水でクモ膜下腔を潅流しアシドーシスの増強を行ったアシドーシス群で脳底動脈の変化を光学顕微鏡および透過型電子顕微鏡を用いて観察し、変化の程度を同時期のクモ膜下出血のみの対照群と比較した。 アシドーシス群では、潅流操作6時間後の早期の観察で脳底動脈内に多発性の血小板凝集塊を高率に認めた。これらの血小板凝集塊はおもに非活性型の血小板で構成されており、脳底動脈本幹よりも分枝において高度であった。また、脳底動脈内皮細胞では高頻度に細胞質内の空胞変性を認めた。空胞の多くは中等大以下の大きさであったが、稀に高度の空胞も認めた。しかし、内皮細胞の脱落や基底膜の露出に至るものはなかった。 一方、対照群でも同様の組織変化を認めたが一般にごく軽度であった。血小板凝集は稀に小さい凝集塊を認めたのみであった。内皮細胞の空胞変性も、程度は軽度で、頻度も稀であり、大部分の内皮細胞には特に形態的な異常は認めなかった。 臨床的にクモ膜下出血後、凝結塊は経時的にアシドーシスに傾くことが知られている。アシドーシスを人為的に増強させた本実験では、短時間の操作で、ごく初期から血管内皮細胞の機能障害により、多発性の血小板凝集を生じており、脳血管攣縮時の末梢循環障害をさらに悪化させる要因になると思われた。今後は、本実験モデルを用い、症候性脳血管攣縮発症のごく初期の病的過程での、内皮細胞の膜透過性などの機能面や、また、ステロイド等の薬剤の効果につてい検討したい。
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Research Products
(1 results)