2006 Fiscal Year Annual Research Report
中国の身分証法と住民基本台帳法の比較研究-行政管理と個人情報保護の分析を踏まえて
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05F05021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森田 朗 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
LI Chunguang 東京大学, 大学院公共政策学連携研究部, 外国人特別研究員
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Keywords | 中国の身分証法 / 住民基本台帳 |
Research Abstract |
住民登録制度は、行政における最も基本的な制度であるが、それについての研究は日本においてもそれほど多くはなく、現在同制度の導入をめざしている中国においては、はるかに少ない。本研究は、こうした住民登録について、日本と中国の制度と実態を比較することにより、同制度の課題と今後の発展の方向を探るとともに、特に中国における制度のあり方について考察を試みた。 日本では、1948年に「戸籍法」が制定され、既にかなり整備された戸籍および住民登録制度によって、住民が把握されているとともに、それが多方面の行政サービスに利用されている。近年では、住民登録の電子化によるサービスの向上が図られる一方で、それがもつプライバシー侵害の可能性が指摘されている。中国では、国民の身分証明と戸籍管理のための制度の創設が進められているが、課題は多い。 本研究では、こうしたこの制度を支える理論面および実際の制度設計と運用実態についての考察を進めたが、長い歴史と広大な国土、多様な地域性を有する中国については、一定の結論に達するにも相当の情報収集が必要であり、今回の研究では制度の把握に加えて実態をも含めた全体像を充分にまとめるまでには至らなかった。それには、さらに時間が必要である。 これまでに検討した論点をまとめておくと、第1に、住民登録制度の制度設計の問題である。どのような個人情報をどのような形態で収集記録するか、それをどのような目的で利用するか、それに伴う危険および制約はいかなるものであるか、また電子化に当たってセキュリティ確保のあり方、システム設計の問題等、全国規模で制度を構築する上での課題は多い。第2に、実際に制度を運用する行政機関の体制である。全国民を登録するためには、全国的な登録機関のネットワークが必要であり、国民の誕生、結婚、死亡その他の事象を的確に把握するとともに、地域間の移動も反映しなければならない。日本では、市町村の主要な事務としているが、そうした機関の設置とそれが的確に機能するようにするためにはかなりの時間がかかる。第3に、住民登録制度に対する国民の理解である。登録が国民の行為であることから、戸籍による存在証明の重要性とその社会的効用が国民に広く理解されないと正確な登録自体が実現しない。しかし、歴史的には、徴兵、徴税等の目的利用されてきたことも多く、国民にとってのメリットを広く理解させることは容易ではない。日本でも長い時間を経て制度として定着してきた。中国の場合には、それを短縮するための啓蒙活動等が重要である。
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