2006 Fiscal Year Annual Research Report
文化間におけるメタ認知の発達的変化と学習方略の関連性
Project/Area Number |
05F05033
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
楠見 孝 京都大学, 教育学研究科, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
DE Carvalho F. Moises K. 京都大学, 教育学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | メタ認知 / 認識論 / 学習 / 個人志向・集団志向 / 文化比較 |
Research Abstract |
近年、個人の認識論をメタ認知に組み込んで検討することの重要性が指摘されるようになってきている(Hofer,2004)。この認識論的メタ認知の構造を実証的に検討する試みのなかで、Carvalho・楠見(2006)は、Hoferの3因子構造の理論モデルが、少なくとも日本の大学生には適合しないことを示している。そして「認知の制御」「認知に関する知識」「知識構成における責任感」「知性に関する理論」の4因子構造が日本の大学生のデータ構造にうまく適合することを明らかにした。本研究では、Carvalho・楠見(2006)の議論をさらに深めて、米国およびフィリピンの大学生の認識論的メタ認知の構造やその関連要因についても調べ、認識論的メタ認知の構造を比較検討することを目的とした。 各国の学生の認識論的メタ認知の構造を調べた結果、Hoferの認識論的メタ認知モデルは、日本、米国、フィリピンのいずれのデータにもうまく適合しなかった。他方、日本の大学生を対象としたCarvalho・楠見(2006)で得られたモデルは、米国、フィリピンのデータにもうまく適合することがわかった。以上より、大学生の認識論的メタ認知の構造は、Carvalho・楠見(2006)で得られた4因子構造モデルによってよりうまく説明できることが示唆される。また、3つの異なる国・文化の学生が有する認識論的メタ認知の構造には共通するところがあることが明らかとなった。次に、文化によって認識論的メタ認知と学生の様々な個人的要因との関連のしかたに文化差があるかどうかを調べた結果、どの文化でも生徒の個人志向/集団志向は認識論的メタ認知の全ての要素を有意に予測しており、個人志向は高度な認識論的メタ認知と有意な正相関を示すことがわかった。さらに、認識論的メタ認知と家族的背景との関連についても文化差が見られた。たとえば、両親による自立の奨励は、日本やフィリピンの学生の認識論的メタ認知には有意な効果を示さなかったが、米国の学生では有意な効果を示した。
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Research Products
(1 results)