2005 Fiscal Year Annual Research Report
漸近解析と数値的手法を用いた非線形偏微分方程式の研究
Project/Area Number |
05F05047
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
俣野 博 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
BOWEN M. 東京大学, 大学院・数理科学研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 非線形問題 / 界面運動 / 進行波 / 漸近解析 / 曲率運動 / 数値実験 |
Research Abstract |
今年度は,ノコギリの歯状の境界をもつ帯状領域における界面運動を研究した.より詳しく述べると,この領域は平面内の無限帯状領域で,その境界はノコギリの歯のように周期的な凹凸を有する.この領域内で,V=κ+Aという運動方程式で支配される曲線の運動を考えた。ここでVは曲線の法線方向の速度,κは曲率,Aは定数である.一般に,この種の方程式はAllen-Cahn型の非線形拡散方程式の特異極限として現れる.また,上のような帯状領域において周期進行波が存在することが,最近のLou-俣野-中村の研究で示されている.本研究では,領域の境界の形状が曲線の運動に及ぼす影響を漸近解析によって詳細に調べるとともに,境界の形状と進行波の速度に関するLou-俣野-中村の研究をさらに発展させることを目指した. この曲線は,領域の境界付近で非常に激しい運動と緩やかな運動を交互に繰り返す。このため,漸近解析は容易ではない.今年度は,接合漸近展開の手法を用いて準備的な解析を行い,境界のギザギザを限りなく小さくしていった均質化極限に関して一定の知見を得た. 次に,上の方程式の係数を時間周期的に変化させたV=b(t)κ+Aという形の方程式を考えた.この問題では,界面運動が空間的周期性と時間的周期性の両方の影響を受ける.こうした状況下で現れる周期進行波の性質は,これまでまったく知られていなかった.空間的周期性と時間的周期性の一方だけでは進行波の速度を速めることができない、しかし興味深いことに,2つの周期性の効果が同時に働くと,進行波の速度が速くなる場合があることが,数値実験によって確かめられた.このような現象は新しい発見である.現在,パラメータの値をさまざまに変えながら数値実験を続けて,この現象の詳しい分析を行っている.
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