2005 Fiscal Year Annual Research Report
超低温STMによる異方的超伝導体の走査トンネル分光研究
Project/Area Number |
05F05057
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
福山 寛 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WINKELMANN Clemens Benjamin 東京大学, 大学院理学系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 走査トンネル分光 / 異方的超伝導 / ルテニウム酸化物 / グラファイト層間化合物 |
Research Abstract |
スピン3重項超伝導の最有力候補であるSr_2RuO_4(T_c=1.5K)の超伝導ギャップを超低温走査トンネル顕微/分光(STM/STS)測定するための予備実験を行った。単結晶試料(京大前野グループから供与)の劈開温度を変えて安定してSTS観測できる条件を探ったところ、100Kと10Kの低温超高真空中で劈開した場合は非常に平坦で安定した表面が得られることが分かった。この劈開面では、しかし、超伝導ギャップは観測されず、代わりに50meV程度の大きなギャップ構造が安定して観測された。他の研究者による光電子分光の測定結果も併せて考えると、劈開面ではRuOの八面体構造が面内回転するような表面再構成が起こっており、バルクと異なる電子状態が実現している可能性がある。一方、室温超高真空劈開した場合や、低温劈開したものを室温まで一旦昇温してから低温に戻した場合は、STM像には原子分解能は失われ、フェルミエネルギー付近で状態密度がエネルギーの平方根に比例する特異なSTSデータが得られることが分かった。これは熱エネルギーのために表面にある種の乱れが生じ、電子局在が起こったためと考えられる。 ごく最近、英仏の研究者によって10Kを超えるT_cをもつグラファイト層間化合物(GIC)超伝導体が発見された。GICの表面は原子スケールで平坦でSTM/STS実験とは相性が良い。また、MgB_2や硼素ドープしたダイアモンドなど最近の一群の新しい超伝導体とも関連深い。そこで、同種のC_6Ca(T_c=10.5K)試料も含めてGIC超伝導体の超伝導ギャップの異方性の有無や引力機能の解明に取り組むため、本年度はC_6Yb試料を上記輸送法で作成して磁化測定から6.4K以下の超伝導性を確認した。また、超高真空中でグラファイト表面にさまざまな異種原子を低温蒸着してするSTM/STS観測するための実験準備を進めた。
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Research Products
(3 results)