2006 Fiscal Year Annual Research Report
時間分解光電子分光法の多次元分子理論への拡張とプロトン移動の直接観測への応用
Project/Area Number |
05F05120
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高塚 和夫 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
VARELLA Marcio Terixeira do Nascimento 東京大学, 大学院総合文化研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | トンネル現象 / プロトン移動 / 水素結合 / 超高速動力学 |
Research Abstract |
現代の科学技術では、フェムト秒(10_<-15>秒)の時間スケールでおきる超高速化学反応の実時間観測が可能になっており、化学反応の実相に迫るものとして多大な関心がもたれている。実時間化学反応ダイナミクスを直接観測する手法としての時間・エネルギー・角度分解の光電子分光法の理論と計算は、高塚等によって、ab initioレベルで展開され、分子科学の強力な解析手法となることが実証されてきた。しかしながら、この研究は現在2次元(直線3原子分子)までに限られており、多次元分子への拡張が強く求められている。多次元分子への拡張は、光電子分光のみではなく、化学反応の量子論という観点でも極めて重要であり、世界がその達成を激しく競っている。 本研究では、化学反応動力学における次元の縮約に関する新しい方法論を開拓し、時間分解光電子分光法の多次元化を実現した。その結果、塩化マロンアルデヒドにおけるプロトン移動の研究は、分子骨格の振動がデリケートなプロトン移動に及ぼす影響を取り込むための、新しいアルゴリズムを構築することに成功した。これを、pump-dump-probe光電子分光法に繰り込み、さらにab initio光イオン化確率振幅を用いて、システマティックな「基底状態の分子内プロトン移動反応の直接観測の理論」と方法論を構築した。 具体的には、時間分解光電子分光により、塩化マロンアルデヒドの内部にあるプロトンが移動する様子を直接観測されることができることを、量子力学的に示すことができた。今後、この実証的理論に基づいて、多彩な実験が展開されることが期待される。これらの成果は、Journal of Chemical Physics誌に二報の論文として公表された。本研究により、角度分解光電子分光の情報を利用することで、プロトン移動に伴う分子内電子再配置(互変異性)の追跡が可能であることが強く示唆されており引き続き、検討を行っている。
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Research Products
(2 results)