2006 Fiscal Year Annual Research Report
ヒドロゲナーゼモデルとなるニッケル/鉄複核錯体の反応
Project/Area Number |
05F05124
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
巽 和行 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
SATYANARAYAN Pal 名古屋大学, 物質科学国際研究センター, 外国人特別研究員
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Keywords | ヒドロゲナーゼ / ニッケル / 鉄 / 水素 / チオラート / カルボニル基 / プロトン / 三核錯体 |
Research Abstract |
[NiFe]ヒドロゲナーゼの活性部位は鉄とニッケルがシステイン残基のチオラートによって架橋された構造であり、鉄にカルボニル基とシアノ基が結合した有機金属骨格を持つことが特徴的である。この構造の再現を目指し、本年度はニッケルチオラート錯体の合成と、得られたニッケル錯体と鉄カルボニル錯体との反応を検討した。 ニッケル(II)チオラート錯体は通常ニッケル周りが平面四配位構造を取り、またチオラート配位子を可逆に溶液中で解離させるために容易にポリマー化する。この点が反応前駆体として用いるための問題点であったが、我々はノルボルナン骨格を利用したキレート型ジチオラート、すなわち1,2-ノルボルネンジチオラートを利用することにより、単核ニッケル(ビス)ジチオラート錯体の合成と単離に成功した。続いて、得られたニッケルジチオラート錯体と種々の鉄カルボニル錯体との反応を検討した。その結果、鉄(II)ヨウ化物Fe(CO)_4I_2との反応から、ジチオラートが鉄とニッケル間を架橋したFe-Ni-Fe三核錯体が生成することを見いだした。興味深いことに、この三核錯体の生成は還元過程を伴い、実際に生成物の鉄はチオラート架橋Fe(I)カルボニル錯体に特徴的な配位構造を有する。また、鉄に配位したカルボニル基はジシラジドアニオンと反応してジシロキサンを遊離し、シアノ基を与えることが分かった。得られたシアノ基含有Fe-Ni-Feカルボニル錯体は、[NiFe]ヒドロゲナーゼの活性部位に特徴的な鉄へのCO/CN配位を実現しており、他の研究グループからの報告例がない極めて興味深い錯体といえる。得られた一連の錯体の電気化学特性、ならびにプロトン酸に対する反応性も調査した。
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