2006 Fiscal Year Annual Research Report
収穫後の熱帯・亜熱帯果実における省エネ・低コスト貯蔵法の開発
Project/Area Number |
05F05189
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
寺井 弘文 神戸大学, 農学部, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
WENDAKOON S.K. 神戸大学, 農学部, 外国人特別研究員
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Keywords | 省エネ・低コスト / スダチ / 貯蔵 / 流通 / 品質 / 1-MCP / クロロフィル / ペルオキシダーゼ |
Research Abstract |
スダチ果実はビタミンCやクエン酸が豊富であり、果汁や果皮が日本料理に多く用いられている。また共同研究者の出身地スリランカでは香酸カンキツとしてDehi lime fruitが同様、広く利用されている。これらの果実は果皮が緑色の未熟状態で収穫・流通され、黄化と共に風味が低下するため、市場価値も著しく低下する。露地栽培のスダチは収穫後、出荷まで低温で貯蔵されるため、設備と電気エネルギーが多用され、これらの不足する途上国では貯蔵は困難であり、先進国でも電力事情は逼迫している。そのため、低温によらない省エネ・低コストでの貯蔵・流通が望まれる。本研究ではスダチ果実を材料とし、1-methylcyclopropene (1-MCP)による低温によらない省エネ・低コストでの品質保持・貯蔵の実験を企画した。 【処理・貯蔵】材料に徳島県産の新鮮な露地栽培のスダチを用いた。1-MCP(ロームアンドハースジャパン)処理濃度は0(無処理)、0.1ppm、0.25ppm、0.5ppmとし、20℃、24時間行った。処理後有孔ポリエチレン袋に入れ20℃暗所で16日間貯蔵した。 【結果】肉眼観察による果実外観の変化は0.1ppmで最も変化が少なく、次いで0ppm、0.25ppmの順となった。果皮の褐変は0.25ppm処理が最も著しく、0ppm及び0.1ppmでは認められなかった。クロロフィル含量は0ppm及び0.25ppm処理では急激に減少したのに対し、0.1ppm処理区では遅れた。この結果と合わせ、クロロフィル分解関連酵素の活性の変化を調べた。クロロフィラーゼについては各処理区間に差異が認められず、Mg-デキレターゼは0ppmで活性が高く、他の2処理区では抑制される傾向にあった。クロロフィル分解ペルオキシダーゼの活性は0ppmで貯蔵2日、次いで0.25ppmで3日、0.1ppmで4日で最大になった。最大値は0ppm、0.25ppm、0.1ppmの順で減少した。 以上のことから、スダチ果実の果皮の緑色保持は0.1ppm処理が最も効果的であり、0.25ppmでは果皮の褐変を引き起こすことがわかった。またクロロフィルの分解にはクロロフィル分解ペルオキシダーゼが関係すること、また1-MCP処理により抑制されることが示唆された。
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