2005 Fiscal Year Annual Research Report
ニホンウナギの回遊と幼生輸送に与えるエルニーニョの影響
Project/Area Number |
05F05205
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
木村 伸吾 東京大学, 海洋研究所, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Hee-Yong 東京大学, 海洋研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | ニホンウナギ / 北赤道海流 / 塩分フロント / エルニーニョ / 生物輸送 / 安定同位体比 / レプトセファルス幼生 / 産卵回遊 |
Research Abstract |
ニホンウナギの産卵場がある北赤道海流の北緯15度付近には塩分フロントがあり、このフロントがニホンウナギの産卵に大きく関連していると考えられている。すなわち、塩分フロントの南側には輸送に適した強い流れが存在するため、幼生が効率的に輸送されるための戦略として、塩分フロントに代表される水塊の違いを利用するというものである。この強流域はエルニーニョとは関連なく北緯10〜15度に位置しているものの、塩分フロントはエルニーニョ時には大きく南下する。そこで、この塩分フロントに着目して、ニホンウナギの産卵環境特性とそれらの卵・稚仔の輸送過程を研究すること目的とし、東経137度線での観測を中心に、栄養塩、クロロフィル、安定同位体比、各種物理データ取得のためのCTD・流向流速観測およびニホンウナギ幼生の採集・凍結保存を白鳳丸研究航海において実施した。 2005年にはエルニーニョは発生しなかったことから、34.5psuの塩分フロントは、平年とほぼ同じ北緯16度付近に認められた。しかし、熱帯低気圧の発達がいくつかあり、低塩分水域内にある北緯14度付近にも塩分の強い勾配が存在し、この南北でレプトセファルス幼生が数多く採集された。そこで、この第二の塩分フロントに焦点を当てて、C-N mapによるレプトセファルス幼生の違いを比較すると、北緯14度を境界に明瞭な二つの区分が存在し、水塊の違いが摂餌に影響していることが確認された。 また、レプトセファルス幼生よりも前の成長段階で、摂餌を全く行っていないプレ-レプトセファルス幼生の窒素同位体比はレプトセファルス幼生より5‰も大きかった。この違いは親の影響を反映するものと考えられ、プレ-レプトセファルス幼生からレプトセファルス幼生に成長する段階で海水中の懸濁態有機物を摂餌することによって変化した可能性が高いことが分かった。
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Research Products
(1 results)