Research Abstract |
世界の国々では今なお寄生虫症によって多くの人々と家畜が苦しめられており,とりわけ,細胞内寄生性原虫に対する有効な治療薬を開発することは先進国に課された重要な使命である。本研究は,インドネシアで薬用に用いられている植物から抗寄生虫活性をもつ植物を探索し,その有効成分を抽出して構造決定を行うことを目的として計画された。本年度は,獣医学領域で問題となっているイヌ・バベシア症の病原体であるBabesia gibsoniを標的として,インビトロにおける赤血球内増殖を抑制する植物を探索した。その結果,インドネシア産薬用植物29種類の抽出物について検討を行ったところ,ニガキ科のBrucea javanica (L.) Merr.の乾燥種子の抽出物が最も強い活性を有することが明らかとなった。この抽出物には,抗バベシア活性をもつ有効成分として2種類の新規のクアシノイド(bruceantinol Bとbruceine J)と,既知のクアシノイド6種類(bruceantinol, yadanziolide A, bruceine A, B, C, D)が含まれていた。とくに,bruceine Aとbruceanitolは,抗バベシア症の治療薬として用いられているガナゼックよりも低濃度で原虫の赤血球内増殖を抑制した。なお,これらの成分については,核磁気共鳴,赤外スペクトル,質量スペクトルなどの各種スペクトルデータを解析して構造決定を行った。
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