Research Abstract |
(1)イネ科牧草の土壌浄化の可能性を検討するために,土壌重金属耐性と体内への蓄積能力の種間差異を調べた。用いたイネ科草は,ライグラス類,フェスク類,オーチャードグラス,ハルガヤなど日本で広く栽培されている10種である。試験は,ホグランド培養液に0umol(コントロール)5umol,10umol,50umolの3水準のカドミウムを溶かした水耕栽培システムを利用した。重金属抵抗性を,処理後の植物体重で測り,回帰分析により抵抗性を回帰性と耐性に分かれて解析したところ,種間には,重金属抵抗性,回避性,耐性に大きな種間差異が見られた。重金属耐性の種間差異は主に,成長速度,細胞の含水率や面積あたりの葉重などと相関関係を示し,葉の含水率が高く成長速度の速い種で重金属耐性は低い傾向が見られた。一方,回避性は,植物体内のCa/Mg比と正の相関を示し,マグネシウムに比べカリウムの比率の高い種で,カドミウムが吸収しにくい傾向が見られた。 (2)さらに,マグネシウムを高濃度に体内に蓄積しやすい系統を用いて,これらの系統が同じ2価イオンのカドミウムも効率よく吸収,蓄積するかを調べた。実験は,水耕栽培法を用い,トールフェスクとイタリアンライグラスの2種を用いた。実験結果,イタリアンライグラスではマグネシウム高蓄積系統は,カドミウムも多く蓄積する傾向が認められたが,トールフェスクでは,そのような傾向は認められなかった。このことから,マグネシウムを効率よく吸収することが,他の2価イオンも効率的に吸収できるわけではないことが分かった。
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