2006 Fiscal Year Annual Research Report
中世文学に見られる異国人に関する研究-明恵と元暁・義湘を中心として-
Project/Area Number |
05F05262
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
渡部 泰明 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
KIM Imjung 東京大学, 大学院人文社会系研究科, 外国人特別研究員
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Keywords | 義湘 / 法蔵 / 賢首国師寄海東書 / 明恵 / 善妙 / 華厳縁起 |
Research Abstract |
中国華厳宗の第三祖法蔵が新羅の義湘に寄せた書簡「賢首国師寄海東書」(現在天理図書館蔵)は、義湘と法蔵との交流を示す貴重な資料として義天撰『円宗文類』巻22、『三国遺事』巻四に収録されている。賢首国師はいうまでもなく華厳宗の第二祖智儼の門下で華厳学を精研し中国華厳宗を大成した法蔵を指す。義湘と法蔵は同学であったが、年齢や教学の造詣からいえば義湘は大先輩にあたる。 この書簡の主な内容は、自己の著作たる『華厳経探玄記』十二巻が完成すると、他の著作と共に弟子の新羅の僧勝詮に書写せしめ、鄭重な手紙を添えてその批判を仰ぎたいと義湘に書簡を寄せてきたのである。この書簡にはまた別幅と思われる、賢首自筆の書目が副えられていたらしいが、この別幅の原本は佚して現在は伝わらない。だが、幸い『円宗文類』に載る別幅の文章によって、当時の事情を一層詳しく推察することができる。興味深いのは、『華厳縁起』の詞書の作者である明恵が『円宗文類』からこの書簡を書き写している事実である。この書簡の内容と背景について詳しく検討することは、明恵思想の解明にも大きく寄与すると考えられる。現在、いまだ詳細な内容分析のなされていない当該書簡の考察を試みた。「賢首国師寄海東書」の書簡をめぐっては、韓国日本学連合会第4回国際学術大会で研究発表を行った(2006・7、於韓南大学、韓国・大田所在)。 また、明恵と義湘との関係において、明恵は『宋高僧伝』に出てくる義湘と善妙の説話にちなんで、承久の乱の際に夫を失った未亡人たちのために、高山寺の南に尼寺を建立して善妙寺と名づけて女人救済を行ったのである。韓国の栄州にある浮石寺(ブソクサ)は巨石が空に浮いた寺の意味だが、現在、この寺には善妙が大盤石となって小乗の僧を追い払ったという巨大な石と善妙堂・善妙像が保存されており、『華厳縁起』絵巻の詞書に描かれている善妙説話と『浮石寺伝』『円宗文類』に語られる説話と相違点があり、義湘と善妙説話の日本における受容の形態をめぐって、両国の資料を比較検討するために、直接韓国を訪問し、現地調査を行った(2006、9月8日〜9月12日)。
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Research Products
(4 results)