2006 Fiscal Year Annual Research Report
生命システムの統合的理解のための生物情報ネットワークの構造および動的挙動解析
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05F05284
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阿久津 達也 京都大学, 化学研究所, 教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
JOSE Carlos Nacher Diez 京都大学, 化学研究所, 外国人特別研究員
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Keywords | 代謝ネットワーク / システム生物学 / スケールフリーネットワーク / 遺伝子ネットワーク / 遺伝子発現データ / mRNA / Stratonovich型確率微分方程式 / 生育温度 |
Research Abstract |
平成18年度は主に以下の3種類の研究を行った。 (1) 平成17年度の本研究において、外部刺激に顕著に反応する遺伝子や部分ネットワークを遺伝子発現データから同定する手法を開発した。平成18年度は、腫瘍の進行段階を刺激に対応させ、開発した手法をマウスの遺伝子発現データに適用することにより、腫瘍の段階と発現データの分布を関連づけた。その結果として、正常細胞とアデノーマ細胞の違いの方が、アデノーマ細胞と癌細胞の違いより大きいという結果を得た。 (2) これまでの既存研究および我々の研究により、遺伝子発現量の分布がべき乗則にほぼ従うことが示されてきた。さらに、そのべき乗則を再現する数理モデルも提案されてきた。本研究では、それらの数理モデルを更に発展させ、細胞内部および細胞外部から受けるノイズの影響を分離し、かつ、mRNAの分解の影響を取り入れた数理モデルをStratonovich型確率微分方程式に基づいて開発した。その結果として、べき指数とmRNAの分解速度とを定量的に関連づけることができた。 (3) 多くの生物における代謝ネットワークは、次数分布がべき乗則に従い、かつ、モジュール構造を持つと報告されている。しかしながら、代謝ネットワークの構造は生物種ごとに異なっている。そこで、生育環境と代謝ネットワークの関係を調べるために、細菌および古細菌のネットワーク構造と生育温度との関連性を調べた。その結果、高い温度で生育する生物の代謝ネットワークは、ランダムグラフに近い均一性の高い構造をしているが、生育温度が低くなるにつれて、均一性が低くなり、モジュール性の高い構造を持つようになることがわかった。
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Research Products
(3 results)