Research Abstract |
トーラス作用をもつ性質のよいトーラス多様体とGKMグラフと呼ばれるグラフとの関係を調べた.この関係の研究は,Guillemin-Zaraによって始められた研究で,トポロジーとグラフ理論との間に大いなる類似があることを示している.我々の対象は,Guillemin-Zaraが取り扱っているものと少し異なるが,非常によい性質をもつもので,トーラス多様体のコホモロジーという幾何学的な量が,GKMグラフから定まる代数的な量と一致し,その代数的な構造を完全に記述した.この代数的な量は,単体的セル複体のface ringと呼ばれるものと一致しており,可換環論の立場からも興味ある対象であると思われ,今後の発展を期待している.なおこの研究は,前田裕氏との共同研究で,論文として纏め,Advances in Mathematicsから出版された. 服部予想に関連して,Bott towerがいつsemifree S^1部分群をもつか調べた.また,これに関連して,Bott towerの位相的な分類を考察した.Bott towerはトーリック多様体の良い例であるか,我々の考察は,Bott tower,もっと一般に,トーリック多様体はコホモロジー環で位相的に分類できるのではないかと予感させる. 我々の研究テーマである「トーリックトポロジー」の国際会議を平成18年5月29日から6月3日の期間,Panov,枡田,原田芽ぐみ氏,Yael Karshonが組織委員となって大阪市立大学で開催した.外国から70名,国内からも70名の参加者があり,多くの研究者が,この生まれつつある分野に関心があることが伺えた.非常に盛況で,意義深い会議であったと思っている.研究費の大半を,この会議のために充てた.なお,この会議の報告集を,アメリカ数学会のContemporary Mathematicsから出版する予定である.
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